新型コロナが在欧日系企業の最大の課題、日EU・EPAの利用は浸透

(欧州)

欧州ロシアCIS課

2020年12月21日

ジェトロは12月21日、9月3~24日に実施した「2020年度欧州進出日系企業実態調査」(有効回答949社)の結果概要を発表した。同調査によると、欧州進出日系企業のうち、2020年に黒字を見込む企業の割合は48.5%と前年(2019年)調査から22ポイント低下した(添付資料図1参照)。製造業のみから、非製造業も対象とする調査を開始した2012年調査以降、最低を記録した。2019年と比べた2020年の営業利益についても悪化(57.4%)が改善(13.0%)を大きく上回る結果となった。進出国の景気の現状を「良い」「やや良い」とみる企業の割合も前年調査の32.6%から8.0%へと大幅に悪化。経営上の課題(複数回答)として、今回新たに選択肢に加えた「新型コロナウイルスの感染拡大」を選択する割合は57.2%と、最大の経営課題になり、「英国のEU離脱(ブレグジット)」の回答割合を上回る結果となった(添付資料表参照)。新型コロナウイルス感染症拡大の影響の大きさがうかがえる。

一方、感染拡大を受け、回答企業の約6割が事業戦略・ビジネスモデルの見直しを行うとしている。回見直し内容として、在宅勤務の活用拡大やバーチャル展示会などの活用推進、人工知能(AI)利用などデジタル化の推進が多く挙げられた。EU、各国が導入するビジネス回復のための支援策のうち注目するものについても、デジタル化投資支援策を回答する企業が34.1%で最大となり、デジタル化への意欲がうかがえる(添付資料図2参照)。

他方、「ブレグジット」は在英日系企業にとって、引き続き最大の経営課題となった。ブレグジットに関連したビジネス環境上の懸念(複数回答)としては在英・在EU企業ともに「英国経済の不振」がそれぞれ71.8%、43.1%と最大の割合になった。「英国の規制・法制の変更」に関する具体的な懸念として、在英・在EUともに製造業では「CEマーク」、非製造業では「英国・EU間の人の移動に関する規制」が最も多い回答となった(添付資料図3参照)。

在EU日系企業における日EU・EPA(経済連携協定)の利用状況について、日本からEU(英国を含む)への輸入で同EPAを「利用している」「利用を準備中」「利用を検討中」と回答した企業の割合は約8割となった。利用に当たっての課題(複数回答)では、「自己証明制度の手続き」の割合が前年調査から10ポイント以上減少し、「サプライヤー/取引先との協力体制整備」が約5割と最大の課題になった。同EPAの利用が普及し、自己証明制度が定着してきた一方で、原産地証明のためのサプライヤーなどからの必要書類の取得・整備が引き続き課題になっているとみられる。在EU日系企業各社の日本からの調達割合の平均値も36.6%と、同EPA発効前の2018年調査から5.2ポイント上昇した。

(田中晋、福井崇泰、山田恭之)

(欧州)

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