郷里送金額は前年度を上回る、先行きには不透明感も

(バングラデシュ)

ダッカ発

2020年12月02日

バングラデシュへの単月の郷里送金額は、2020/2021年度(2020年7月~2021年6月)に入り、年度を通して過去最高額を記録した前年度を上回る傾向が続いている。7月には単月で過去最高額となる25億9,800万ドルに達した。8月から10月にかけても前年同月を上回る送金額を記録しており、10月は過去3番目に多い21億1,200万ドルとなっている(添付資料表参照)。11月は12日間で既に10億ドルに上っているとの報道もある。郷里送金の増加に伴い、外貨準備高は10月末時点で輸入額(注)の約8.8カ月分に相当する408億ドルまで伸びており、これも過去最高額を記録している。

送金額が増加している大きな要因として、政府が本年度も郷里送金に対するインセンティブ(2020年7月22日記事参照)を継続し、インセンティブの適用上限額を5,000ドルに引き上げたことが考えられる。また、報道によると、欧米の預金金利がゼロに近い一方で、バングラデシュは4~6%と比較的高金利であること、国際線の停止・減少により人を介した違法な郷里送金の受け渡しが減少した半面、合法的な通常送金の利用が増加したこと、国土の4分の1以上に被害をもたらした洪水と新型コロナウイルスによる二重苦により、故郷の家族の家計が例年よりも悪化したことによる送金需要の増加などが背景として挙げられる。

他方、今後は前年比で送金額が減少する懸念もある。アジア開発銀行の8月時点の推計によると、2020年のバングラデシュへの郷里送金額は新型コロナウイルスの影響により、2018年と比較し最大で27.8%減少するとされている。最大の出稼ぎ先である中東や欧州で失業した労働者が帰国前に郷里送金していることが送金増の大きな要因で、あくまで一時的な増加との見方もある。新型コロナウイルスのさらなる感染拡大により、出稼ぎ先の雇用環境が今後一層厳しくなることで、送金額が減少に転じる懸念もあり、先行きは不透明だ。

(注)2018/2019年度の輸入額確定値(約560億ドル)

(山田和則)

(バングラデシュ)

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