ジェトロが日英EPAセミナー開催、英国向け輸出で日EU・EPAからの継続利用に向けて

(日本、英国、EU)

欧州ロシアCIS課

2020年12月04日

ジェトロは11月30日、日本と英国の包括的経済連携協定(日英EPA)に関するオンラインセミナーを開催し、経済産業省通商政策局経済連携課の石川なな子課長補佐、ジェトロ海外調査部欧州ロシアCIS課の田中晋課長が日英EPAの合意内容と、英国のEU離脱(ブレグジット)に伴う移行期間終了後の英国向け輸出の留意点ついて講演した。

日英EPAは10月23日に署名され、既に協定文や政府の関係資料は公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますされている。オンラインセミナーの関連で実施した参加者向け事前アンケートによると、回答した視聴者の約6割が「日英EPAを利用予定」と回答。また、約6割が既に日EU・EPAを利用し、そのうち半分以上が英国向け輸出で活用しており、日英EPA利用への円滑な移行に関心が高いことがうかがえた。

講演ではまず、石川氏が鉱工業品関税やルール分野を中心とした日英EPAの大筋合意内容について解説した。ブレグジットの移行期間終了後、英国ではEU法が適用されなくなり、日EU・EPAを適用できなくなることから、日本との新たな貿易協定が必要だったことと、日英EPAの交渉で日本政府は日EU・EPAと同様に高いレベルの市場アクセスを維持し、英国との関係における日本企業のビジネス継続性の確保を重視したことを説明した。さらに、日英EPAでは、鉄道車両やターボジェットなどの一部の品目について追加的に関税の即時撤廃を獲得し、協定の発効時から日EU・EPAの関税撤廃スケジュールと同じタイミングで関税率の削減・撤廃を行う(キャッチアップ)点、EU産材料やEUでの生産工程を日英のものとみなす「拡張累積」を規定した点が特徴だとした。

協定の発効時期については、日英両国の国会・議会で現在、承認手続きを進めており、2020年12月31日の移行期間の終了後、遅延なく発効するよう準備を整えているとした。

田中課長は移行期間終了後の英国向け輸出の留意点について解説。移行期間終了で英国がEU単一市場の域外国となることによるビジネスへの影響をはじめ、英国の新たな関税制度、日英EPAの利用時の英国向け輸出の関連事項などについて説明した。特に、英国でこれまでEU法により適用してきたCEマークに代わってUKCEマークが導入されること、EUの化学品規制REACHに代わってUK REACHが整備される点などが英国へ製品を輸出する際の留意点として強調した。

セミナー参加者からは、原産地に関する申告文の記載方法や、サプライヤー宣誓書などの原産地証明書類に関する具体的な事項や英国の新たな規制など、日EU・EPAから日英EPAへのシフトに当たっての実務的な質問が多く寄せられた。

オンラインセミナーのアーカイブ映像については、ジェトロの日英EPA特集ページにて近日中に公開する。ジェトロでは今後、日英EPAの特恵関税の活用方法を解説する「日英EPA解説書」を作成するほか、英国への輸出に際した日英EPA活用のための情報を中心に、日英EPA関連情報の提供の充実化を図っていく予定。

(土屋朋美)

(日本、英国、EU)

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