「植物性タンパク質生産拡大戦略」発表、食料供給の主権回復を目指す

(フランス)

パリ発

2020年12月09日

フランスのジュリアン・ドノルマンディー農業・食料相は12月1日、「植物性タンパク質生産拡大国家戦略」を発表した。1億ユーロの予算を充当し、現在、100万ヘクタールほどあるタンパク質を多く含む植物の作付面積を、今後3年間に40%増加させ、2030年までには2倍の200万ヘクタールに拡大し、農地面積の8%とすることを目指す。

生産拡大の主な目的は、(1)タンパク質を多く含む農作物(特に大豆)の輸入依存の低減、(2)畜産業者の飼料の自給改善、(3)国産の乾燥豆(レンズ豆、ひよこ豆、インゲン豆、ソラ豆など)の供給促進。

1億ユーロの予算は、経済復興策(2020年9月7日記事参照)の一環として、2021年から2年間に割り当てられる。そのうち5,000万ユーロを、植物性タンパク質の生産加工、貯蔵、流通の設備機器の投資支援に充て、マメ科植物の生産から流通までの体制を構築する。また、畜産業者の家畜飼料の自給改善に向けた設備投資支援と牧草地拡大のための飼料用マメ科植物種子の購入支援に2,000万ユーロ、マメ科の品種改良など研究開発に2,000万ユーロを充てる。さらに、植物育種の革新や昆虫など新たな形態のタンパク質の開発には700万ユーロ、乾燥豆の消費促進活動に300万ユーロを支出する。加えて、第4次未来投資計画(2021~2025年)の一環としての次世代技術の開発支援や、投資銀行BPIフランスによる投資支援も行う。

同戦略の策定のため、政府と農業関係者、研究者、関連企業、環境団体などが1年前から協議を行ってきた。フランスの農業は、家畜の飼料や肥料を輸入に大きく依存した上で成り立っているが、新型コロナウイルスによる衛生危機により、食品供給システムが脆弱(ぜいじゃく)という事実を再認識させられ、同戦略の策定を後押ししたかたちだ。

現在、フランスは、大豆や菜種などのタンパク質が豊富な飼料の約半分を輸入に依存している。また、食用の植物性タンパク質については、国内の消費が増加しているにもかかわらず、3分の2を輸入に依存している。大豆をブラジルから大量に輸入しているフランスは、ブラジルの森林破壊も問題視しており、エマニュエル・マクロン大統領は「フランスは、ブラジルの森林破壊に一部責任がある」として、植物性タンパク質の国内自給を望んでいた。

ドノルマンディー農業・食料相は「フランスは欧州一の農業国であるにもかかわらず、輸入に依存し過ぎている。優先事項は食料供給の主権を回復することであり、それは植物性タンパク質の生産拡大なしには成しえない」とした。

(奥山直子)

(フランス)

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