個人所得税率を2021年初に引き上げ、21年ぶりに累進税が復活

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2020年11月30日

ロシアでは2021年1日1日から個人所得税率の引き上げが行われる。これまで一律13%だったのが、年収500万ルーブル(約700万円、1ルーブル=約1.4円)を超える部分に対して15%の税率が課されることになる。累進税の導入は21年ぶり。

ウラジーミル・プーチン大統領は11月23日、国税基本法第2部の修正に関する連邦法(2020年11月23日付第372-FZ号)に署名した。同連邦法によると、国税基本法第224条を改定し、課税対象額が500万ルーブル超の場合、65万ルーブルの課税(注)に加え、500万ルーブルを超えた部分に15%の税率が適用される。課税対象額が500万ルーブル以下の場合、これまでどおり13%が適用される。資産売却益や資産贈与所得(ともに有価証券を除く)、保険金・年金受給による収入に対しては500万ルーブル超の場合でも税率は13%となる。

2021~2023年の連邦予算法案には、個人所得税引き上げによって2021年に600億ルーブル、2022年に641億ルーブル、2023年に686億ルーブルの歳入が得られると記載されている(2020年10月8日記事参照)。連邦院(上院)予算・金融市場委員会のアンドレイ・エピシン委員長は、追加税収は生命に危険を及ぼす重度の疾患や希少疾患を含む慢性疾患を抱える子供の治療に活用されると述べている(連邦院発表11月18日)。

ロシアでは1990年代に累進税が導入されていた。当時のハイパーインフレーションを背景に、ほぼ毎年課税の閾値(いきち)が変更されたこともあり、累進税の仕組みが機能しなかった。プーチン氏が2000年に大統領に就任した後、2001年に13%のフラットタックス制を導入。徴税が簡素化され、また、国民が容易に理解できる税制に変わったことで税収増につながった。一方、低所得層に厳しいフラットタックス制の見直しをめぐり、2015年ごろから累進税の復活に関する議論が行われてきた。

(注)500万ルーブルに13%の税率を掛けた金額。

(齋藤寛)

(ロシア)

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