プーチン大統領、温室効果ガス排出量削減に関する大統領令に署名

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2020年11月06日

プーチン・ロシア大統領は11月4日、気候変動に関するパリ協定の義務履行のため、温室効果ガス排出量削減に関する大統領令(2020年11月4日付第666号)に署名した。

この大統領令は2030年までに温室効果ガスの排出量を1990年比で70%のレベルに削減することを規定している。削減に当たっては、社会経済の健全な発展とバランスを取りながら、森林やその他生態系による吸収能力を最大限に生かすとし、温室効果ガス排出の防止と削減、吸収に関する措置の実現に向けた条件整備を行うと記載している。

ロシアで気候変動は深刻な問題として捉えられている。プーチン大統領は10月22日に開催された世界の有識者とのディスカッションの場であるバルダイ会議で、地球温暖化により永久凍土の融解が発生していると指摘。「ロシアは国土の65%が永久凍土のため、生物多様性や経済、インフラに多大な損害が生じる。融解が進むことで、永久凍土に含まれるメタンガスが大気中に放出され、温室効果がさらに強まる」と危機感を表した。

ロシア政府は2019年9月に「気候変動に関するパリ協定」を批准(2019年9月25日記事参照)しており、2020年3月には経済発展省が低レベルの温室効果ガス排出を前提とした2050年までの長期発展戦略案を策定している。

一方、今回の大統領令は大きな変化をもたらさないとの論調が一般的だ。主要経済紙「コメルサント」(11月5日)は、現在ロシアが放出する温室効果ガス排出量は森林による二酸化炭素吸収量を含めて1990年比で50%減、含まない場合で30%減となっていると紹介。高等経済学院世界経済学部のイーゴリ・マカロフ学部長は「大統領令に記載された削減目標は既に達成済みのため、追加の規制措置を導入する必要はない」と分析している。

大企業が加盟するロシア産業家起業家連盟(RSPP)は「ビジネスに損害をもたらさない客観的で公正なもの」と評価する声を挙げている。

(齋藤寛)

(ロシア)

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