米GDP成長率、第3四半期は急回復も新型コロナ前の水準には戻らず

(米国)

ニューヨーク発

2020年11月02日

米国商務省が10月29日に発表した2020年第3四半期(7~9月)の実質GDP成長率(速報値)は前期比年率33.1%となった(添付資料図表参照)。市場コンセンサス予想(ダウ・ジョーンズ調べ)の32%を上回り、統計開始(1947年)以来最大の伸び率を記録した。マイナス31.4%を記録した第2四半期(4~6月:2020年8月3日記事参照)からは急回復となったものの、前年同期比でみるとマイナス2.9%にとどまり、新型コロナウイルス流行前の第1四半期の水準に回復するには至らなかった。

個人消費が回復を牽引

2020年第3四半期の需要項目別の寄与度をみると、個人消費支出が25.3ポイントと大きく回復に寄与した。その他、寄与度の大きな項目としては在庫投資が6.6ポイント、設備投資が2.9ポイントだった。輸出は4.9ポイントで回復に寄与したものの、輸入も大きく回復しマイナス8.0ポイントとなり、純輸出(外需)はマイナス3.1ポイントと、成長率を押し下げる結果となった。

需要項目の内訳を前期比年率で見ると、個人消費支出は40.7%増で、統計開始(1947年)以来最大の増加幅となった。内訳は、財が45.4%増〔耐久財(82.2%増)、非耐久財(28.8%増)〕、サービスが38.4%増と大きく増加した。要因として、財では自動車・同部品、衣類が増加し、サービスではヘルスケア、飲食サービス・宿泊などが増加した。

設備投資は20.3%増と前期の27.2.%減から大きく回復した。住宅投資も59.3%増と前期の35.6%減から大きく回復している。

在庫投資は寄与度6.6ポイントと大きく回復に寄与しているが、小売業の増加を反映しており、特に自動車ディーラーが回復を主導している。

純輸出(外需)は、輸出が59.7%増、輸入が91.1%増と、いずれも前期(それぞれマイナス64.4%、マイナス54.1%)から大きく回復した。輸出入ともに財が増加しているが、輸入ではサービスも増加(24.2%増)している。

物価は、価格変動が大きいエネルギーや食料を除いた個人消費支出デフレーター(コアPCE)の上昇率が前期比年率で3.5%、前年同期比で1.4%となった。

JPモルガン・チェース・アンド・カンパニーのチーフ米国エコノミスト、マイケル・フェローリ氏は「(今回の回復は)第3四半期に経済再開が効果を発揮した範囲内のものであり、今後部分的に経済閉鎖の可能性はありうる。第4四半期(10~12月)の動向を注視する必要がある。」と述べた(「ブルームバーグ」10月29日)。また、アライアンス・バーンスタインのシニアエコノミストであるエリック・ウィノグラード氏は「今後これまでの景気刺激策の効果が薄れてくることが予想され、改善のペースが鈍化することが予想される」(「CNBC」10月29日)と述べている。

(宮野慶太)

(米国)

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