2035年までの自動車技術ロードマップ、基幹技術や産業チェーンの「自主化」を強調

(中国)

北京発

2020年11月05日

中国自動車エンジニアリング学会は10月27日、「省エネルギー・新エネルギー車技術ロードマップ2.0」を発表した。工業情報化部装備第1司の指導の下、同学会が中心となり作成したもので、一定程度政府の意向が反映されているとみられる(注)(2020年11月5日記事参照)。ロードマップでは、中国の自動車産業の現状について、一部の基幹部品が輸入に深刻に依存しており、産業チェーンを安全かつ管理可能(安全可控)とすることが難しい、と指摘した。その理由として、自動車開発用の設計とシミュレーション・プラットフォーム・ソフトウェア、自動車規格の計算チップ、パワー半導体、高精度センサーなどが大きく海外に依存していること、基幹基礎材料の弱点として、高品質電磁鋼、非晶質(アモルファス)合金コア材などが、研究段階で十分なレベルに達していないことを挙げた。

こうした問題意識を踏まえ、2035年に向けた6大総体技術目標の中の1項目として、「基幹核心技術の自主化レベルを大きく引き上げ、効率が高く、安全かつ管理可能な産業チェーンを形成する」との内容が設定された。

上記のとおり、全体を通して、基幹技術や産業チェーンが目指す方向性について、「自主」「自主コントロール可能(自主可控)」「国産化」といった内容が強調されている。

10月29日に発表された党中央委員会第5回全体会議(五中全会)コミュニケにおいても、イノベーションを国家の現代化建設における核心的地位として堅持するとし、科学技術の「自立・自強」を国家発展の戦略的支えとする、との方針が示されており、科学技術の「自立」が強調されているが、本ロードマップでも同様の方向性が示されている。

中国米国商会、中国日本商会、中国EU商会は、既にIT・エレクトロニクス分野などにおいて、「自主可控」「安全可控」などと呼ばれる、明文化されていない制度により、政府調達から外資製品を排除し、中国企業による生産を進める動きがあることを問題視している(2020年10月23日記事参照)。また、中国米国商会などは、民間調達の分野にも同様の動きが広がることを懸念している。今後、自動車分野においても同様の動きが進んでいくか、注視する必要がある。

(注)国家新エネルギー車イノベーション行程プロジェクト専門家グループの王秉剛グループ長によると、同ロードマップにおいては、プラグイン・ハイブリッド車(PHEV)と純電動車(BEV)が「新エネルギー車」に分類され、燃料電池車(FCEV)、レンジエクステンダー式車(REEV)、ハイブリッド車(HEV)が「省エネルギー車」に分類されている。

(北京事務所)

(中国)

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