欧州委、洋上再生可能エネルギー戦略を発表

(EU)

ブリュッセル発

2020年11月24日

欧州委員会は11月19日、2050年までの気候中立(温室効果ガスの排出実質ゼロ)を目指す「欧州グリーン・ディール」の一環として、洋上再生可能エネルギー戦略PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表した。欧州委は、EU域内の洋上風力発電能力を現在の12ギガワット(GW)から、2030年までに最低でも60GWに、さらに2050年までに300GWへと大幅な拡大を目指す。また、これを補完するかたちで、波力発電や潮力発電などの海洋エネルギーやその他の新興技術による発電に関しても、2030年までに最低でも1GWに、2050年までに40GWに、その発電能力の拡大を推進する。

欧州委は、こうした洋上再生可能エネルギーは、気候中立の実現において必要不可欠とし、「再生可能な水素」(2020年7月10日記事参照)の生産に使用されるエネルギー源としても、最も有望な技術とみており、洋上再生可能エネルギーを欧州のエネルギー政策の中心に位置付けるよう提言している。

目標実現に向けて、多角的な支援を提供

欧州委は、こうした目標の達成のためには、2050年までに約8,000億ユーロの投資が必要と試算している。そこで、加盟国に対して、「新型コロナウイルス危機」対策である復興基金のうち、総額6,725億ユーロに及ぶ「回復レジリエンス・ファシリティ」(2020年9月18日記事参照)の有効活用を求めており、欧州委も、欧州投資銀行ともに「インベストEU」(2018年6月14日記事参照)を通じた民間投資の促進策を打ち出している。また、欧州委は、こうした官民を挙げた投資を制度面からも支援するために、洋上再生エネルギーの発電施設や送電網の国境を越えた、より効率的な設置のための加盟国間の協力枠組みの策定や、国家補助の指針や再生可能エネルギー指令などの現行の法制度の改正も予定している。

さらに欧州委は、洋上再生エネルギーの技術面でも、研究開発支援プログラム「ホライズン・ヨーロッパ」(2020年10月1日記事参照)などを通じた支援を加速させることで、EUのこの分野での先駆者としての強みを生かし、世界におけるEU産業界のさらなる競争力の強化につなげたい考えだ。

(吉沼啓介)

(EU)

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