バイデン氏勝利の場合のブレグジットへの影響に関心、英米FTA交渉は膠着か

(英国、米国)

ロンドン発

2020年11月11日

英国のボリス・ジョンソン首相は11月7日、米国大統領選挙で勝利を確実にした民主党候補のジョー・バイデン前副大統領への祝意を表明し、「米国は最も重要な同盟国で、気候変動や通商、安全保障などの共通課題で緊密に協働することを期待している」とツイートした。首相はまた、10日にバイデン氏と電話で初めて話し合い、新型コロナウイルス対策やNATOなどについても意見を交わし、2021年に英国が主催するG7や第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)へのバイデン氏の参加を念頭に、これらの課題について協力することで一致した。

国内メディアは、バイデン氏がバラク・オバマ前大統領とともに、英国のEU離脱(ブレグジット)に反対していたことや、アイルランド系移民の子孫である同氏が北アイルランドをめぐるジョンソン政権の対応を批判したこと(2020年11月11日記事参照)、さらに、同氏がドナルド・トランプ大統領と近い関係にあるジョンソン首相を「見た目も心も(同大統領の)クローン」とやゆしたことなどを取り上げ、バイデン氏の勝利で英米関係が冷え込む可能性を指摘している。

実際に、バイデン氏は10日のジョンソン首相との電話協議で、ベルファスト合意(北アイルランド紛争に関する和平合意)への支持を表明同日行われたアイルランドのミホール・マーティン首相との電話協議でも、同合意と北アイルランド和平プロセスへの支持を明言しており、同地域を不安定にしかねない新法成立をもくろむジョンソン政権は難しい立場にある。

他方で、英米関係はバイデン新政権になった場合、強化されるとの見方もある。同氏に近いクリス・クーンズ米上院議員は11月7日のBBCの取材で、「気候変動や情報保護、安全保障、民主主義の普及など、英国の現政権は米新政権の重要事項の多くを共有する。協働できることは多く、こうした永続的かつ構造的な力が両国を短期間で緊密な関係にするだろう」とコメント。ブレグジットに関係なく、米英関係は極めて重要とした。

これら政策課題での関係強化も見込まれる一方、交渉が続く英米自由貿易協定(FTA)(2020年5月20日記事参照)の早期妥結を予測する見方は少ない。BBCや米政治メディアのポリティコは、2国間交渉は米国農産品の対英アクセスなどを焦点に難航する一方、最終的には両国とも「環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP、いわゆるTPP11)」への加入で、両国間にFTA関係が成立する可能性があると指摘している。

(宮崎拓)

(英国、米国)

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