欧州委、緊急時の雇用維持支援策としてEU加盟国への融資開始

(EU)

ブリュッセル発

2020年10月29日

欧州委員会は10月27日、緊急時の失業リスク緩和のための一時的支援策(SURE)に基づく財政支援の第1弾として、イタリアに100億ユーロ、スペインに60億ユーロ、ポーランドに10億ユーロを融資として拠出したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。新型コロナウイルスの感染拡大やそれに伴うロックダウンの実施などによる雇用情勢の大幅な悪化を受け、各EU加盟国は雇用維持策として、時短勤務による減収や一時的な失業に対する給付金制度などを導入しており、それにより急激な公的支出の増加に見舞われている。SUREはこうした加盟国を財政面から支援するものだ。

原資は加盟国が保証を提供するEU名義の債券

SUREは、欧州委がEU名義の債券を発行することで金融市場から資金を調達し、加盟国の要請に基づいて有利な条件で融資する制度だ。各加盟国がEU予算に対して自発的に保証を提供するなど、EUは高い信用格付けを得ていることから、加盟国が単独で金融市場から借り入れるよりも有利な条件で資金調達することが可能になる。現行の枠組みでは、最大1,000億ユーロまでの資金調達を想定しており、既に17加盟国に対し合計879億ユーロの融資を提供することがEU理事会(閣僚理事会)によって承認されている(添付資料参照)。

第1弾の原資として、欧州委は既に10月21日、2030年10月に満期償還を迎える100億ユーロ分と、2040年に満期償還を迎える70億ユーロ分の債券を発行しており、投資家の関心は高く、13倍を超える応募超過となった発表している。

SUREは欧州での新型コロナウイルスの感染拡大を受け、欧州委が3月に提案し、EU理事会が5月に承認したもので、7月21日に欧州理事会(EU首脳会議)が政治合意したEU名義の債券を原資とする返済不要の補助金3,125億ユーロを含む総額7,500億ユーロの復興基金(2020年7月21日記事参照)とは別の制度だ。

(吉沼啓介)

(EU)

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