欧州委、通関手続き一元化法案を発表
(EU)
ブリュッセル発
2020年10月29日
欧州委員会は10月28日、通関手続きの合理化とデジタル化を推し進める通関手続き一元化(シングルウインドー)規則案を公表した。この法案は、関税同盟行動計画(2020年9月29日記事参照)の一翼をなすもので、通関手続きで必要なさまざまな書類の提出先をEU加盟国ごとに一元化し、さらに、加盟国当局間の連携を向上させることで、通関手続きの効率化を目指すものだ。
通関手続きにおける事業者の負担軽減と各加盟国の一律的な実施が目的
現在、EU域内と日本など第三国との輸出入では、通関申告時に公衆衛生や環境、農業、漁業、文化保護、市場監視などを目的に、さまざまな書類を加盟国の各担当当局に別々に提出することが求められる場合があり、事業者にとって大きな事務的負担となっている。また、各加盟国当局の実施する通関手続きの厳格性が必ずしも一定でないことから、EUの単一市場および関税同盟の一体性を損ねる結果となっている。
そこでまず、各加盟国に通関関連書類の一元化した提出先となる電子窓口の立ち上げを求め、欧州委が設置するEUのデジタル枠組みと、各加盟国の一元化電子窓口を接続させることで、全ての関連当局が必要な情報へアクセスできるようにする。最終的には、既存の関連当局が別々に設けている窓口を各加盟国の一元化電子窓口に置き換えることで、事業者の事務的な負担を軽減させるとともに、各加盟国当局がEU規制に基づく通関手続きの一律的な実施を確保したい考えだ。
欧州委は、EUレベルだけでなく、加盟国レベルでも法整備や一元化に対応した新たなITシステムの開発などが必要となることから、今後10年間といった長い期間をかけて徐々に実施していくべきだとしている。また、各加盟国には相応の投資が必要となることから、欧州委は復興基金の中核政策である回復レジリエンス・ファシリティー(2020年9月18日記事参照)などの資金を通じて援助をしていく予定だ。
なお、同法案の成立には今後、EU理事会(閣僚理事会)と欧州議会での審議を経て採択する必要があることから、成立時期は未定だ。
(吉沼啓介)
(EU)
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