欧州委、グリーン・ディールの一環として化学品戦略を発表

(EU)

ブリュッセル発

2020年10月16日

欧州委員会は10月14日、EUの化学政策の長期的なビジョンを示す「化学品戦略PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」を発表した。これは、化学品が、脱炭素化やエネルギーと資源の効率化技術など、欧州委が推進する環境配慮型経済への移行を目指す「欧州グリーン・ディール」に必要不可欠だが、同時に「欧州グリーン・ディール」が掲げる汚染ゼロ化目標のためには、化学品の保健衛生や環境上のリスクへのさらなる対応も求められることから、策定されたものだ。EUには既にREACH規則やCLP規則など、包括的かつ厳格な化学品規制(注)があるが、必ずしもその内容や適用が十分でないことから、今後の新たな規制や行動計画の道筋を示した。

内容と適用の両面から化学品規制の強化を目指す

今回の戦略は、有害な化学品の規制の強化を掲げる。現行の規制においては、大部分の化学品が用途別などに分かれて規制されていることから、消費財への使用に関する包括的な規制に改める。最も有害な化学品に関しては、必要不可欠な用途の基準を策定し、必要不可欠な用途かつ代替品がない場合にのみ、その利用を限定する。特に、ホルモンに悪影響を及ぼす内分泌かく乱物質に関しては、拘束力のある危害要因特定に関する法律を策定し、必要不可欠な用途を除き、消費財への使用を禁止する。また、化学品の安全性は通常、物質ごとに評価されており、複数の化学品が組み合わさった場合の影響の評価は限定的にしかなされていない。そこで、REACH規則において、化学物質の複合影響評価の導入方法を検討する。さらに、化学品による汚染ゼロを目指し、化学品の環境への有毒性、持続性、生体蓄積性などを全面的に考慮した新たな有害物質の分類や基準をCLP規則に導入し、パーフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物(PFAS)に関しては、必要不可欠な用途を除き、その利用を全面的に禁止する。

化学品規制の適用も強化する予定だ。市場に流通している化学品に由来する危険な製品の9割はEU域外からの輸入品で、またREACH規則における科学物質の登録制度においても、情報要件に完全に準拠しているのは全体の3分の1にすぎないことから、加盟国に執行能力の強化を求めるなど、国境および域内での既存の規制の適用を強化するとした。

(注)化学品の登録、評価、認可、制限に関する規則(REACH規則)や、化学物質および混合物の分類、ラベル表示および包装に関する規則(CLP規則)など。詳細は「EU輸出入品目規制 特定危険化学品に関する規制PDFファイル(393KB)」を参照。

(吉沼啓介)

(EU)

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