欧州自動車工業会、充電スタンドの不足を繰り返し強調

(EU)

ブリュッセル発

2020年10月30日

欧州自動車工業会(ACEA)は10月28日、2019年末時点のEU加盟国(離脱した英国を含む28カ国)における電気自動車(ECV)(注1)の普及状況などをまとめた2020年版報告書「排出ゼロのモビリティへの移行」を公表した外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。同報告書は2019年版に続く2回目の公表となった。前年度版と同様に、2019年の新車登録台数に占めるECVの割合は漸増傾向にあるものの、ECV用充電スタンド数の深刻な不足が課題となっていると指摘している。

充電スタンドの75%が4カ国に集中

2019年にEU28カ国で新車登録されたECVは45万8,915台で、登録車数全体の3.0%だった(注2)。登録台数上位はドイツ(10万8,629台)、英国(7万2,766台)、オランダ(6万6,801台)、フランス(6万1,356台)、スウェーデン(4万404台)の順で、この5カ国で全体の76%を占める。

ACEAはECVの普及が一部の加盟国に偏る要因として、充電スタンドの不足および偏在を挙げた。2019年末時点の充電スタンド数は19万9,825カ所で、前年から40%増加した。しかし報告書では、欧州委員会の試算に基づけば2030年までに少なくとも280万カ所の充電スタンドが必要で、現在の取り組みでは不十分との見方を示した。スタンド設置数上位はオランダ(5万824カ所)、ドイツ(4万517カ所)、フランス(3万367カ所)、英国(2万8,538カ所)の順で、この4カ国で総数の75%に達する。これに対し、東欧・北欧を中心に15の加盟国では設置数が1,000カ所未満にとどまっている。さらにACEAは、現状では充電スタンドの大半が急速充電に対応できないタイプである点も課題に挙げた。急速充電に対応する出力22キロワット以上の充電スタンドは総数の14%の2万8,586カ所にとどまる。

なお欧州委員会は7月に発表した「エネルギーシステム統合戦略」(2020年7月10日記事参照)の中で、2025年までにEU域内の充電スタンドを100万カ所以上に拡充する必要性を指摘している。ACEAのエリック・フイテマ事務局長は10月20日にACEAがオンラインで開催したセミナーで、この点に関連して「100万カ所では不十分」と言及、さらなる取り組みを欧州委に求めた。

(注1)ACEAは、燃料電池自動車(FCEV)も含むバッテリー式電気自動車(BEV)とエクステンデッド・レンジ電気自動車(EREV)を含むプラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)の2種を「Electrically-Chargeable Vehicles(ECV)」、すなわち「電気自動車(Electric car)」と定義している。

(注2)2018年は2.0%。なお、2020年第2四半期には7.2%まで上昇している(2020年9月4日記事参照)。

(安田啓)

(EU)

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