東洋製罐HD、培養エビ開発のシオック・ミーツに投資

(シンガポール)

シンガポール発

2020年10月05日

東洋製罐HDは10月1日、エビ・甲殻類の細胞培養開発を行うシンガポールのスタートアップ、シオック・ミーツ(Shiok Meats)に投資したことを明らかにした。同社は2019年4月にシンガポール支店を開設して以来、同国のスタートアップへの第1号投資案件となる。

シオック・ミーツは2018年8月創立のスタートアップで、エビ・甲殻類から幹細胞を分離する独自技術を持つ。同社はクリーンなエビ・甲殻類の製造を通じて、アジア地域が抱える食料問題や気候変動、海洋汚染の社会課題解決を目指している。同社の9月29日の発表によると、今回、シリーズAの資金調達で、オランダの投資ファンドのアクア・スパークがリードし、東洋製罐HDをはじめ、リアルテックホールディングス(本社:東京)、シンガポールの産業・貿易振興政府機関エンタープライズ・シンガポール(ESG)の投資部門、シーズ・キャピタルなどが参画。資金調達総額は1,260万米ドル。シオック・ミーツは2022年に培養エビのミンチ肉の商業販売を目指しており、今回調達した資金はそのためのパイロット・プラントの建設資金に充てる予定。

東洋製罐HDは2019年から同社の容器の技術やノウハウを活用して、社会課題を解決し、持続可能な未来の暮らしづくりを目指すオープンイノベーションプロジェクト「オープン・アップ!(OPEN UP!)」を開始。シンガポールに「フューチャー・デザイン・ラボ(Future Design Lab)」を開設した。同社はラボを開設して第1号投資案件となるシオック・ミーツへの投資について「食生活を支えるインフラ企業として、今回の出資により、シオック・ミーツの世界初となる商用規模の(甲殻類の細胞培養の)パイロット・プラント建設を進め、培養エビ、甲殻類製品を食卓に届ける社会実装に向けて、ともに取り組んでいきたい」と述べた。

シンガポール政府は2019年3月、栄養ベースで食料自給率30%達成を2030年までに目指すことを発表している(詳細は2020年9月17日付地域・分析レポート参照)。この目標達成のための研究開発(R&D)の重点項目として、細胞培養によるタンパク質生産も、都市型農業や食品安全と並んで挙げている。

(本田智津絵)

(シンガポール)

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