政府が輸入管理を強化、輸入取引の認可取得がさらに困難に

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2020年10月26日

アルゼンチン中央銀行は10月16日、企業による輸入取引の支払いを管理する新たな方針を発表した。また、企業が債務を支払う際に必要な外貨取得を一部緩和する方針も伝えた。

10月16日付中銀コミュニケ(通達)「A」7138号PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)によると、輸入の支払いを管理する措置は次のとおり。

  • 輸入取引の支払いに関わる銀行・金融機関などは、輸入業者がSIMI(輸入の総合モニタリングシステム、「輸出入手続き、必要書類等」を参照)を通じて輸入取引を認可する許可書を取得したか、確認を行うよう義務付ける。
  • 企業が国外送金のために、1日当たり5万ドル以上相当の外貨購入を求めた場合、中銀への報告を義務付ける。これまで、中銀への報告義務は、1日当たり50万ドル以上相当の外貨を求めた場合とされていた。

アルゼンチンでは、外貨準備高の減少や通貨ペソの対ドルレート下落が続いている。10月16日付の現地紙「iプロフェッショナル」によると、今回の中銀発表の目的について中銀関係者は、「単なる情報管理」だと説明しているが、同紙は「輸入規制をさらに強化することにつながる」と指摘している。同紙はまた、SIMIシステムを管理する工業・知識経済・対外通商庁は、「商品によっては輸入業者の申請を数カ月も前から認可していないだけでなく、認可しない理由も明らかにしていない」と報じている。今後は、SIMIの認可なしでは、中銀は輸入の支払いを許可できない。

アルゼンチン輸入業者協会(CIRA)によると、非自動輸入ライセンス(注1)が認可されず、LED照明、タイヤ、繊維品、履物類、光ファイバーや、国内産業が必要とする多くの部品・消耗品などの輸入も滞っていることから、「今回の中銀の発表によって状況が悪化する」と懸念を示す。また、自動車専門誌「アウトブログ」は10月16日、自動車の輸入においても、これまでSIMIの認可を待つ間、取引の支払いは可能だったが、「今後はSIMIの認可なしでは支払いが不可能となる」と指摘する。このような状況に対してエコノミストらは、2012年から2015年にかけて、輸入を厳しく規制するために当時の政府が導入していた「輸入取引事前宣誓供述書(DJAI)制度(注2)」に類似する状況にあり、「アルゼンチン政府はWTOルールに違反している可能性がある」と警鐘を鳴らしている。

中銀は10月15日付で、月当たり100万ドル以上の対外債務を抱える企業に対しては、それら債務の支払いの際、輸出取引で得た外貨を利用することを認めると発表した。中銀は、9月15日付で、企業が2021年3月31日まで、月当たり100万ドル以上の対外金融負債を抱えている場合、同債務額の40%相当の外貨購入のみを許可し、残り60%分は債務再編交渉を行い、その債務再編計画を中銀に提出するよう義務付けた(2020年9月17日記事参照外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。今回の発表により、40%分の返済に当たっては、国内為替市場を通じて輸出決済を行う必要がなく、輸出で得た外貨をそのまま利用できるとする。

写真 政府の外貨規制や新型コロナ感染拡大に伴う外出規制措置などにより、両替商の閉鎖も相次いでいる(ジェトロ撮影)

政府の外貨規制や新型コロナ感染拡大に伴う外出規制措置などにより、両替商の閉鎖も相次いでいる(ジェトロ撮影)

(注1)アルゼンチンにおける非自動輸入ライセンスは、輸入取引の際に取得が求められる事前の輸入許可証。公共歳入連邦管理庁(AFIP)のウェブサイト上に設けられている「輸入の総合モニタリングシステム(SIMI)を通じて申請を行う。現在、同制度の対象となっているのは約 1,500 品目。詳細はジェトロレポートPDFファイル(359KB)参照。

(注2)輸入取引事前宣誓供述書(DJAI)制度は、2012年に制定された制度で、輸入事業者は指定された事項を連邦歳入庁(AFIP)に登録し、事前承認を得なければならなかった。このような輸入制限措置に対し、日本、米国、EUは、GATT11条第1項(数量制限の一般的廃止)に違反するとしてWTOにパネルの設置を要請。アルゼンチンは、2015年12月31日に同制度を撤廃した。

(山木シルビア)

(アルゼンチン)

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