ウルグアイが夏の観光シーズンも国境を封鎖する一方、アルゼンチンは開放へ

(ウルグアイ、アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2020年10月26日

ウルグアイのルイス・ラカジェ・ポウ大統領は10月22日、新型コロナウイルス感染拡大を防ぐ目的で、夏の観光シーズン(北半球における冬)においても国境は開放せず、外国人観光客を原則受け入れない方針を発表した。その一方で、隣国アルゼンチンのマティアス・ラメンス観光・スポーツ相は10月24日、アルゼンチンは、ウルグアイ、ブラジル、パラグアイ、ボリビア、チリからの観光客を受け入れるため、入国制限を緩和する方針を発表した。両国にとって観光産業は大きな外貨収入源だが、新型コロナウイルス感染拡大状況やその対応策が大きく異なり、今後の方針や影響が注目される。

ウルグアイ政府は、3月下旬に国境の封鎖と外国人の入国制限(2020年3月18日記事参照)を行い、6月にはビジネス目的の短期渡航を許可するなど一部例外措置も導入している。しかし、8月に予定していた欧州からの入国制限解除をいまだ見合わせているなど、外国人受け入れについては慎重だ。ウルグアイ国家緊急システム(SINAE)によると、10月24日時点の新規感染者数は48人で、累計感染者数は2,807人、累計死者数は53人。ウルグアイは強制的な外出禁止令は導入せず、国民に社会的距離(ソーシャルディスタンス)を保ちながら事業を行うよう呼び掛けた(2020年4月13日記事参照)。中南米諸国の中では比較的、感染を抑え込むことに成功している。しかし、現在は感染者数が増加傾向にあることや、隣国アルゼンチンで高い水準の感染状況が続くこと、さらに欧州で夏のシーズンに国境を開放したことによって感染拡大が悪化したことを受け、今回の方針に至った。ウルグアイ政府関係者は「(今回の国境封鎖の継続は)残念で悲しい決断ではあるが、国民の健康を優先したい」と語った。

一方、アルゼンチンでは、外出禁止措置が長期化している。外出禁止措置は7カ月以上続いており、この影響を強く受けている観光業からの強い要請もあり、アルゼンチン政府は夏のシーズンが近づくにつれ、緩和措置の導入に動き出した。アルゼンチン国内では、10月15日には商用便の運航を再開し(2020年10月19日記事参照)、隣国との国境開放は11月2日に開始する予定。空路での入国と、ウルグアイからはフェリーでの入国も可能となる。アルゼンチン観光省は、PCR検査結果を求める予定だが、入国後の隔離期間は設けない考えだとしている。ラメンス観光相は「ウイルスと共存していくに当たって、観光客を受け入れる体制は整った」と述べた。

10月23日付のアルゼンチン国営テラム通信によると、2019年にウルグアイを訪れた外国人観光客数は350万人で、内訳ではアルゼンチン人が180万人、ブラジル人が40万人。今回のウルグアイ政府の決定で「ウルグアイの経済的なダメージは23億ドルに上る」と報じている。24日付のアルゼンチンの「ラナシオン」紙によると、アルゼンチンの発表を受け、ウルグアイ政府は感染拡大のリスクに警鐘を鳴らし、渡航は禁止しないものの、自粛するよう国民に呼び掛けるという。

写真 ウルグアイの首都モンテビデオ市中心部の街並み(ジェトロ撮影)

ウルグアイの首都モンテビデオ市中心部の街並み(ジェトロ撮影)

写真 アルゼンチン南部のバリローチェでは既に試験的に観光の再開を実施(ジェトロ撮影)

アルゼンチン南部のバリローチェでは既に試験的に観光の再開を実施(ジェトロ撮影)

(山木シルビア)

(ウルグアイ、アルゼンチン)

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