一品物の日本食浸透と越境EC、日本産輸出拡大の追い風に、ジェトロがウェビナー

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2020年09月08日

ロシアでは近年、ラーメンやうどん、焼き鳥など一品物のカジュアル日本食を提供する店舗が相次いで出現し、現地で食される日本食の多様化が進んでいる。加えて、越境電子商取引(EC)という新しい流通チャンネルを通じて、日本産の食品輸出に取り組む事例もみられる。ジェトロはロシアにおける日本食品の市場や流通状況、規制概要をウェブセミナーで解説した(8月28日)。以下のその概要を紹介する。

ジェトロ農林水産・食品部農林水産・食品課の菱川奈津子職員は日本の食品輸出の全体像とロシア向け輸出の現状と魅力について解説した。2019年のロシア向け日本産食品の輸出額は36億円で、日本の食品輸出総額の0.4%とわずかだが、ポテンシャルが大きいと指摘。ロシアでは消費者の多くが日本食に安心・安全という好印象を抱いていること、また、欧米向けには輸出が難しい畜肉エキスを含む商品も一部輸出可能な点が魅力と評した。一方で、ロシア国内では食料品が安く手に入るため、消費者は価格にシビアだと述べた。

ジェトロ・モスクワ事務所の大北祐ダイレクターはロシアの日本食事情について説明。最近のトレンドとして、バザールの中に設置されているしゃれたフードコートに、一品物で勝負する店が出現していると指摘(地域・分析レポート特集「ロシアでの日本食ビジネスの新たな潮流」参照)。店側は一品のみで顧客を獲得するために、従来の豊富なメニューを取りそろえる店と比べて、食材にこだわって一品の味をより追求する傾向がある。このため、高品質な日本産食品の使用拡大の好機と述べた。

写真 旧来のバザールとフードコートを融合した新形態のマーケット(ジェトロ撮影)

旧来のバザールとフードコートを融合した新形態のマーケット(ジェトロ撮影)

ジェトロ海外調査部欧州ロシアCIS課の加峯あゆみ職員はECを活用した日本産食品の流通・販売状況について説明。日本産食品の輸入・流通を手掛ける現地企業は近年ECに力を入れており、調味料や菓子、紅茶、コーヒーが売れ筋商品だと述べた。また、ロシア向けに日本産の食品輸出を手掛ける越境EC事業者を紹介した(詳細は地域・分析レポート特集「拡大するロシアEC市場」参照)。

ジェトロ海外調査部欧州ロシアCIS課の齋藤寛課長代理はロシアの食品輸入に関する認証制度や動植物検疫、放射性物質検査などの概要を解説。食品分野で取得が求められる製品認証は「適合宣言書」と呼ばれるもので、ユーラシア経済連合(EEU)域内に登記された法人もしくは個人事業主でないと取得できない。つまり、ロシアへの食品輸出に当たっては、現地にパートナーを得る必要があると強調した(詳細は調査レポート「ロシア品目別輸入手続き」参照)。

(加峯あゆみ)

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