「183日ルール」含むコロナ禍の税務をヒアリング

(インドネシア)

ジャカルタ発

2020年09月08日

在インドネシア日系企業は新型コロナウイルスの感染拡大により、売り上げの急激な減少などに苦しんでいる(2020年8月3日付地域・分析レポート)。そのような中、インドネシア政府は税制優遇策を打ち出し、企業活動をサポートする構えだ(2020年7月29日記事参照)。ジェトロでは9月2日、この施策の運用状況や日系企業が抱えている税務問題などについて、現地で日系企業の税務相談に当たっているCrowe Indonesiaの三好博文氏(日本の公認会計士、ジェトロ・プラットフォームコーディネーター)にヒアリングを行った。概要は以下のとおり。

(問)三好氏は現在の税制優遇策をどう評価しているか。

(答)7月に施行された財務大臣規程2020年第86号により、輸入時前払い法人税(PPh22)の免除措置対象業種が拡大され、より多くの製造・販売業者がこの制度を利用できるようになった。そのインパクトは大きい。また、知り得る限りだが、対象業種であれば利用申請が問題なく受理されているため、実際の運用も適切に行われているようだ。

(問)直近では日系企業からどのような相談を受けることが多いか。

(答)業績悪化により、税金の過払いとなることが見込まれる(注)ため、税金の還付手続きや、その際の税務調査のプロセスについて問い合わせを受けることがある。また、「コロナ禍」の影響で資金繰りが悪化したことにより、財務支援を親会社などから受ける方法や、そのための条件設定の方法に関する問い合わせも増えている。

(問)「コロナ禍」で日本に一時帰国中の駐在員がインドネシアに戻れない期間が長引いている。日本での滞在期間が183日を超えてしまった結果、短期滞在者免税、いわゆる「183日ルール」を享受できなくなり、インドネシアと日本の双方で個人所得税の納税義務が発生することへの懸念が聞かれるが、税務上どのように整理したらよいか。

(答)大きく2つのパターンに分けられる。1つ目は、駐在員の給与の一部を日本法人が負担している場合だ。一時帰国した場合、滞在期間が183日を超えるか否かにかかわらず、非居住者として日本国内で勤務したことに対する給与などが日本の源泉所得税20.42%の対象となると考えられる。2つ目は、インドネシア法人が駐在員給与を100%負担している場合だ。一時帰国期間が183日を超える場合、短期滞在者免税が受けられなくなるため、インドネシアで支給している給与について、日本でも源泉税の対象となると考えられる。なお、いずれのケースでも、徴収された税額はインドネシアでの確定申告で外国税額控除の申告ができる。

(注)インドネシアでは前年度業績に基づく法人税額を月次で前納する(PPh25)ため、前年より業績が悪化すると、当該年度決算の結果、法人税が過払い状態になる。過払い分は還付請求を行う。

(上野渉)

(インドネシア)

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