英自動車業界、サプライヤー救済プログラム開始
(英国)
ロンドン発
2020年09月30日
英国自動車製造販売者協会(SMMT)は9月29日、サプライチェーン企業も含む英国自動車業界全体の雇用を守るべく、救済プログラム「セーフハーバー計画」を開始した。新型コロナウイルス感染拡大で同業界は大きな打撃を受けた。加えて、英国のEU離脱(ブレグジット)に伴う移行期間の終了が3カ月後に迫る中、EUとの交渉は依然難航しており、英国・EU間のモノの流れに関する条件など不透明感が業界を覆っている。資金繰りに苦しむ英国のサプライヤーは同計画の支援下に入ることにより、自動車メーカーからの支払い条件の改善や金融機関からのより良い条件での資金援助などの経営状況改善のための交渉が可能となる(「ブルームバーグ」9月28日)。自動車メーカーには、ジャガー・ランドローバーや日産自動車などが名を連ねた。
同計画は英国自動車産業の全てのサプライヤーが利用でき、希望する企業はまずSMMTと事前相談をして要否を判断する。その後、両者の間で必要と判断された場合は、関係企業などとともに第三者機関と連携し、支援策について協議、実行するといったプロセスを踏む。
SMMTのマイク・ホーズ会長は「セーフハーバー計画は、自動車産業が再稼働し、企業や消費者の信頼が回復する中で、市場に落ち着きを与える貴重な取り組みとなるはずだ。しかし、最終的にこの産業の成長には競争力維持が不可欠で、そのため政府にはEUとの野心的な貿易協定締結を期待している」と述べた。
苦境に立つ英国自動車産業
SMMTによると、2020年1月から8月までの8カ月間の英国の自動車生産台数は、前年同期比40.2%減と依然として深刻な状況が続いている。また、8月単月でも前年同月比44.6%減となり、徐々に回復傾向にあった7月(同20.8%減)から再び悪化した。生産台数の8割以上が海外向けを占める中、海外での需要低迷が大きな要因とされる。また、現在交渉中の英国とEUの自由貿易協定(FTA)が、移行期間が終了する2020年12月31日までに締結されなければ、欧州自動車業界が負う損失は2025年までの5年間で約1,100億ユーロに上り、1,460万人の雇用に影響が出るとした(2020年9月15日記事参照)。特に、英国の工場では約528億ユーロの損失が生じると試算している。
(尾崎翔太)
(英国)
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