欧州自動車業界、FTAなき英国のEU離脱は新型コロナ危機に続く「災禍」と警告

(EU、英国)

ブリュッセル発

2020年09月15日

欧州自動車工業会(ACEA)と欧州自動車部品工業会(CLEPA)は9月14日、英国自動車製造販売者協会(SMMT)、ドイツ自動車産業連合会(VDA)など23の自動車業界団体とともに声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表し、EUおよび英国双方に対して、自由貿易協定(FTA)締結を強く求めた。英国のEU離脱移行期間が終了する2020年12月31日までにFTAが締結されなければ(ノー・ディール)、欧州自動車業界が負う損失は、2025年までの5年間で約1,100億ユーロに上り、1,460万人の雇用に影響が出るとした。

新型コロナウイルスとノー・ディールの二重の大打撃に危機感を示す

「FTAなき離脱」となった場合、例えば、英国からEUへの輸入には乗用車に10%、バン・トラックに22%の関税が課されることになる。声明では、多くのメーカーにとっては、関税額がマージンを上回るため、販売価格の引き上げに踏み切らざるを得ず、需要に影響が出ることが予想される。さらに、部品についても関税の影響を受けることから、生産コストの増加や、より価格が安い国からの輸入の増加を招くとした。その結果、乗用車とバンについては、EUおよび英国において生産台数が約300万台減少し、英国の工場では528億ユーロ、EU域内の工場では577億ユーロの損失が生じる、と試算する。

2020年春からの新型コロナウイルス危機は、欧州自動車業界に深刻な影響を与えている(2020年8月4日記事参照)。今回の声明においても、「新型コロナ危機」により、これまでに生産台数が約360万台減少、1,000億ユーロの損失が出ているとして、ACEAのエリック=マーク・フイテマ事務局長は「FTAが締結されなければ、業界は二重に大きな打撃を受ける」と述べた。また、SMMTのマイク・ホーズ会長は、「FTAなき離脱」によってもたらされるとする損失額は「惨状を示すもの」とし、雇用や経済への影響の大きさを強調した。

その上で、「自動車業界の成功にとっては野心的なFTA締結が重要」で、協定には、関税および輸入割当量(クオータ)なし、内燃機関車および代替燃料車、さらには部品やパワートレインについての適切な原産地規則、規制の相違を避けるための枠組みを盛り込むべきとした。また、移行期間の終了までに企業が新たな状況に対応できるように、合意内容についての詳細な情報が必要だとした。

(滝澤祥子)

(EU、英国)

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