新型コロナ禍に伴う雇用悪化で、外国人の就労査証発給基準を厳格化
(シンガポール)
シンガポール発
2020年09月03日
シンガポール人材省(注1)は9月1日から、外国人の幹部・専門職向け就労査証「エンプロイメント・パス(EP)」の発給基準となる最低基本月給を、これまでの3,900シンガポール・ドル(約30万4,200円、Sドル、1Sドル=約78円)から4,500Sドルに引き上げた。さらに、10月1日から、中技能職向けの「Sパス」発給基準を、従来の最低月給2,400Sドルから2,500Sドルに引き上げる。同省は1月と5月、それぞれSパスとEPの発給基準となる最低月給を引き上げていたが(2020年3月9日記事参照)、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う国内雇用環境の悪化を受けて、さらに厳格化した。
今回のEP発給での最低月給の引き上げは、新規申請の場合9月1日申請分から、更新の場合2021年5月1日からそれぞれ適用となる。また、40歳代の中堅キャリアのEP候補者の最低月給は、若手候補の基準値(4,500Sドル)の約2倍必要となる。
他方、Sパス発給での最低月給の引き上げは、新規申請の場合10月1日申請分から、更新については2021年5月からそれぞれ適用される。全従業員に占めるSパスの発給比率の上限と、雇用主が負担する外国人雇用税の税率に変更はない(注2)。また、これまでEP申請時に義務付けていた地元人材を対象とした求人広告の掲載について、10月1日申請分からはSパス申請時も義務付ける。さらに、同日から広告の掲載期間をEPとSパス共に28日間とし、従来の2倍に延長する。
金融サービス部門の外国人就労パス保持者、12月から発給基準再強化へ
さらに、人材省は、金融サービス部門のEPについて、発給基準となる最低月給を5,000Sドルに引き上げる。この引き上げは、新規申請で12月1日申請分から、更新で2021年5月1日申請分から適用される。同省が特定の部門を対象に発給基準を強化するのは初めて。
(注1)人材省は外国人労働者の就労査証について、技能や学歴、就労経験、賃金に応じて、幹部・専門職にEP、中技能職にSパス、低技能職にワーク・パーミット(WP)などを発給している。
(注2)Sパスの全従業員に占める発給上限比率は2020年12月末まで、サービス部門が13%、その他の部門が20%。外国人雇用税は330~650Sドル。EPについては発給上限比率と外国人雇用税は課せられない。
(本田智津絵)
(シンガポール)
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