ASEAN域内FTAでの原産地自己申告制度、9月20日から運用開始

(ASEAN、タイ、シンガポール)

バンコク発

2020年09月16日

8月25日のASEAN経済担当相会合(AEM)では、2010年に発効したASEAN物品貿易協定(ATIGA)の修正議定書の運用開始(注1)が発表された(2020年9月2日記事参照)。修正議定書では大きく分けて(1)原産地自己証明制度(ASEAN-Wide Self Certification:AWSC)の導入、(2)原産地証明書へのFOB価格の記載義務の撤廃、(3)連続する原産地証明書(バックトゥバックC/O)の発給時要件の追加の3点が定められた。このうち、自己証明制度の主なポイントは以下のとおり。

  • 対象者:輸出者、生産者のいずれも、「認定輸出者(Certified Exporter:CE)」に認可されることで制度が利用可能となる(注2)。CE登録申請は各国の原産地証明書発給当局に対して行う。登録情報はASEANの有するデータベースに保管され、各国税関などが参照する。
  • 原産地申告書類:商用インボイス、請求明細書(Billing Statement)、荷渡し指図書(D/O)、パッキング・リストのいずれか。商用インボイス以外の書類でも原産地申告が認められたことで、第三国で商用インボイスを切り替える手続き(第三国インボイス)がある場合でも利用可能となった。
  • 申告時の最低記載事項:(1)物品名、(2)HSコード〔6桁、もしくはASEAN統一通関コード(AHTN、8桁)〕、(3)適用する原産地判定基準、(4)原産国、(5)FOB価格〔付加価値基準(RVC)適用時のみ〕、(6)物品の数量、(7)商標(該当する場合のみ)に加え、CEの署名権者による署名が必要(注3)。記載方法については、ASEAN事務局ウェブサイトにて参考フォーマットPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)が公開されている。
  • 署名権者:1社につき10人まで登録可能。

なお、9月20日からの制度導入に向け、各国の発給当局も周知を進めている。シンガポール税関が9月1日、2020年第6号通達として製造業者・輸出者向けのガイドラインを発出PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)し、その中でCEの申請フォームも公開外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。また、タイ商務省外国貿易局(DFT)も9月3日、AWSCの下での登録・自己証明にかかる通達を発出外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますしている。9月15日には各国発給当局などが参加するワークショップが開かれ、それぞれの国での運用について説明があった。同会合では、自己証明制度の下では自己申告を行う企業が申告内容に責任を負うことから、社内のコンプライアンス体制の構築、原産地規則に関する知識の共有などが必要との声も聞かれた。

(注1)ATIGA修正議定書は2019年1月22日に署名、同年8月21日に発効したが、1年間の準備期間を経て2020年9月20日に運用が開始される。なお、自己証明制度の導入後も、従来の第三者証明(フォームD、電子フォームD)の利用も可能。

(注2)該当する輸出者は、ASEAN向け輸出で優良な記録を有し、製造者もしくは輸出者申告の提示が可能な場合に限る。

(注3)ATIGAを適用して輸入した貨物を分割輸出するなど、複数の原産地証明を組み合わせる(Back-to-Back)場合には、上記に加え、輸入した際の原産地証明書類の参照番号と原産国、輸入時に自己申告制度を使った場合は当該認定輸出者番号の記載が必要。

(蒲田亮平)

(ASEAN、タイ、シンガポール)

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