メルケル首相、欧州最大級の国内AIクラスターをオンライン訪問

(ドイツ)

ミュンヘン発

2020年09月25日

ドイツのアンゲラ・メルケル首相は9月9日、欧州最大級の人工知能(AI)クラスターである、ドイツ南部に位置するバーデン・ビュルテンベルク(BW)州のサイバーバレー外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますをオンラインで訪問、研究施設を見学したほか、クラスターに属する研究者や企業と意見交換した。ビンフリード・クレッチマンBW州首相、アーニヤ・カーリクチェック連邦教育・研究相らが同席した。

サイバーバレーは、BW州の州都シュツットガルトと南方約50キロに位置するチュービンゲンにまたがるクラスターとして、2016年12月に発足した。産官学が集まり、機械学習(マシンラーニング)、コンピュータビジョン(注)、ロボット工学(ロボティクス)などの分野を中心に、情報共有、共同での研究開発、ビジネス化などを進めるエコシステムの形成を目指している。研究結果をビジネス化する一環として、研究機関などからスピンオフするスタートアップ企業の支援も行っている。

サイバーバレーの参加メンバーには、これまでに1億8,000万ユーロを投資してきたBW州に加え、教育・研究機関としてチュービンゲン大学、シュツットガルト大学、マックス・プランク・インテリジェントシステム研究所、フラウンホーファー研究所が、また企業からは、アマゾン、BMW、ダイムラー、ポルシェ、ボッシュ、ZF、IAVが参加している。

メルケル首相は、サイバーバレーについて、「AI拠点としてのドイツの魅力の模範」とした上で、「大学・研究機関と企業の協働により、優れた研究成果を革新的なビジネスモデルへと移転し得ることを示している」とコメントした。今回の意見交換で、メルケル首相とクラスター関係者との間では、主に、研究成果をいかに企業に移転するかについて議論が交わされたという。

ドイツは、AIを最も重要な技術の1つと位置付け、AIの研究と実用化でドイツが世界の先頭に立てるよう、矢継ぎ早に政策を打ち出している。例えば、連邦政府は2018年11月、「AI戦略」を発表し、2025年までに30億ユーロの拠出を決定した(2018年12月28日記事参照)。また、2020年6月に新型コロナウイルス危機対策として打ち出された経済対策では(2020年6月10日記事参照)、AI分野への拠出額を30億ユーロから50億ユーロに引き上げることが発表されている。

(注)コンピュータがデジタルの画像や動画を理解することを扱う研究分野。

(クラウディア・フェンデル、高塚一)

(ドイツ)

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