8月のインフレ率は2.7%上昇、外貨規制や燃料値上げの影響に懸念

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2020年09月25日

アルゼンチン国家統計センサス局(INDEC)は9月16日、8月の月間インフレ率〔消費者物価指数(CPI)上昇率〕は2.7%(過去12カ月の累積の年率は40.7%)だったと発表した(添付資料図参照)。8月のインフレ率は、新型コロナウイルス感染拡大の影響による外出禁止措置が開始した3月以来の高い上昇率となった。INDECによれば、季節によって価格が大きく変動する野菜や果物が4.0%上昇し「大きく影響した」とする一方で、価格統制された公共サービス料金、携帯電話や教育関連サービスが1.0%の上昇で「安定した」と解説する。他方、季節によって激しく変動する品目を除いたコアインフレ率は、8月は3.0%上昇した。

8月の月間インフレ率を分野別にみると、最も高い上昇率を記録したのは食品・飲料(酒類を除く)の3.5%で、特に野菜、果物、茶類、カカオ、ミネラルウォーター、炭酸飲料、果汁、肉類などで大きく上昇した(添付資料表参照)。家財道具・住宅管理部門も同じく3.5%上昇し、家具、家電品、電子製品などが値上がりした。娯楽・文化は3.3%上がり、書籍、新聞紙、雑誌、玩具などの値上がりが影響した。

政府は、特定の品目について価格統制や価格凍結を行っているが、それでも2020年1~8月の月間インフレ率の累計は18.9%に達し、政府が9月15日に議会に提出した2021年国家予算案では、2020年通年で32%が見込まれている。具体的な価格統制制度としては、「プレシオス・マクシモス制度」(食料品をはじめとした生活必需品約2,300品目の価格を3月6日時点の店頭価格に据え置く販売上限価格統制制度)を10月31日まで継続する。そのほか、「プレシオス・クイダードス」(352品目が対象の価格凍結制度)では平均6%の上昇を許可した上で10月上旬まで延長する。また、新たに建築用資材93品目も「プレシオス・クイダードス制度」に加え、3カ月ごとに更新される参考価格を定めた。

9月16日付の現地紙「エル・クロニスタ」によると、エコノミストらは、9月以降のインフレ率について「月間平均4%」を見通している。ただ、9月15日付でアルゼンチン中央銀行が発表した外貨規制措置の強化(2020年9月17日記事参照)によって、特に貿易財の価格がさらに押し上げられる可能性がある。「エル・クロニスタ」では、「アルゼンチンの歴史上、為替規制などで外貨の入手が困難となった場合、主に電子製品、高級品、輸入品などは、非公式レート(闇レート)をベースに価格設定され、また、通貨切り下げの可能性を懸念し、予防的に価格を上昇させる傾向がある」と説明している。

政府は、8月に燃料を平均4.5%値上げすることを許可していたが、9月19日から3.5%の値上げを再び許可した。9月のインフレ率上昇に影響を与えそうだ。

(山木シルビア)

(アルゼンチン)

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