2021年の成長率見通しを5.5%に設定、来年度予算案を議会に提出

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2020年09月28日

アルゼンチンのマルティン・グスマン経済相は9月15日、下院予算委員会に2021年(1~12月)の国家予算案を提出した。2019年12月10日に発足したアルベルト・フェルナンデス政権では初めてとなる同予算案について、グスマン経済相は「現実的かつ慎重な枠組みの中で、経済回復への道筋を定める予算案」と説明した。議会で約1カ月にわたって討議が行われる予定だ。

予算案によると、2021年の歳入総額は6兆305億アルゼンチン・ペソ(約8兆4,427億円、1ペソ=約1.4円)で、対GDP比16.1%、2020年比では44.3%増を見込む。歳出総額は8兆2,841億8,600万ペソで、対GDP比22.1%、前年比17.8%増となり、財政総収支は2兆2,536億8,600万ペソの赤字となる見通し。基礎的財政収支(プライマリーバランス)は1兆7,033億1,700万ペソで、2020年の対GDP比8.5%の赤字から、2021年には対GDP比4.5%の赤字への改善を見込む。

また、主なマクロ経済指標の見通しも盛り込まれた(添付資料表参照)。2020年のGDP成長率は新型コロナウイルス感染拡大の影響によりマイナス12.1%を見込むのに対し、2021年には5.5%のプラス成長に転じる見通しとなっている。2022年と2023年には経済回復が減速し、それぞれ4.5%と3.5%のプラス成長を見込んでいる。2020年の消費者物価上昇率(インフレ率)は年率32%となると見込みで、2021年は29%、その後の2年間も徐々に減速する予測だが、依然として年率2桁台のインフレが継続する見通しだ。他方、民間エコノミストらの見通しでは、2021年のインフレ率は47.1%(2020年9月18日記事参照)となっている。為替は、2020年末には1ドル81.4ペソ、2021年末には同102.4ペソ、その後の2022年、2023年の末期はそれぞれ123.8ペソと145.4ペソを予測している。さらに、予算案では、2021年の輸出額は744億3,200万ドルで2020年比10.2%増、輸入額は593億4,600万ドルで前年比16.3%増となり、貿易収支は150億8,700万ドルの黒字を見込む。

政府は、2021年には公共投資政策を優先するとし、特に次の6つの柱に戦略的に集中する。(1)住宅、エネルギー・水道、鉄道・道路工事などの生産および社会インフラに約4,314億ペソ、(2)イノベーションと開発に約700億ペソ、(3)新型コロナウイルスワクチンの購入費を含む公共医療に約1,260億ペソ、(4)教育施設の建設、パソコンの配布、奨学金などを含む教育とコネクティビティーに約1,071億ペソ、(5)食料政策、雇用および人材育成に関わるソーシャルインクルージョン(社会的包摂)に約2,375億ペソ、(6)ジェンダーと多様性に関わる政策に約55億8,000万ペソを見込むとしている。

(山木シルビア)

(アルゼンチン)

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