連邦航空局、ピピストレルの電動航空機の飛行と商用化を支援
(スイス、EU)
ジュネーブ発
2020年08月14日
スイス連邦航空局(FOCA)は8月3日、スロベニアの航空機メーカーであるピピストレル(Pipistrel)の2人乗りオール電化航空機「ヴェリス・エレクトロ」がスイス西部のフリブール州のエキュビエン飛行場で、型式証明(注)を取得した電動航空機として世界で初めて飛行を行ったと発表した。
EU航空安全庁(EASA)から型式証明を得るためには、設計レベルの安全性検証に加え、実機を用いた航空機の運行管理や整備、パイロットや地上係員の訓練などを行って安全性を示す必要がある。ピピストレルの本拠地はスロベニアだが、電動航空機はスイスに駐機しており、スイスでの運行管理などの実機検証部分において、FOCAはEASAからの型式証明取得に大きく貢献したとしている。ピピストレルを含めた3者の協働の結果、同機は6月10日に、手続き開始から3年弱という極めて短い期間で、軽スポーツ航空機(LSA)としての型式証明を取得した。FOCAとEASAは、ピピストレルとの協力関係を通じて今回得られた電動航空機のバッテリーやパワーシステムの管理に関するノウハウを、将来の電動航空機の審査業務に生かすことを期待している。
ピピストレルは、2人乗り電動航空機の初号機「アルファ・エレクトロ」の米国での型式証明取得に取り組んでいた。2018年4月には米国連邦航空局(FAA)から実験機としての耐空証明を得ており、これはFAAでも電動航空機としては初と伝えられているが、その後はLSAとしての型式証明取得まで進んでいないもようだ。
航空機由来の二酸化炭素排出量の削減は国際的な課題となっており、スイスでも、2020年6月の炭素法改正により、スイス出発の航空便に航空チケット税が課されることになった(2020年6月17日記事参照)。代替燃料や電気を動力源とする環境負荷の低い航空機の開発競争が激化している中、今回の初飛行により、欧州とピピストレルは電動航空機の実用化に向けて大きく先んじることができた。
(注)型式証明は、航空機のモデルごとに与えられる安全性証明で、設計や運行管理体制の検査を行う。耐空証明は、型式証明を取得済みの航空機について機体ごとに与えられる安全性証明で、完成品検査にあたる。
(和田恭)
(スイス、EU)
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