政府が地場穀物大手ビセンティンの接収計画を撤回

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2020年08月07日

アルゼンチン政府は7月31日付の必要緊急大統領令(DNU)636/2020号外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに基づき、地場穀物大手ビセンティンの経営権を接収するための措置を取りやめると発表した。政府は6月9日付官報で公布したDNU522/2020号により、債務不履行に陥って破産宣告していたビセンティンS.A.I.C.の経営を国が管理する目的で、60日間にわたって国が介入すると定めていた(2020年6月22日記事参照)。

アルベルト・フェルナンデス大統領は自身のツイッターでも「ビセンティンへの介入を義務付けた必要緊急大統領令を廃止する」と表明した。その理由として「ビセンティンの破産宣告に携わっている裁判官が会社が実際に抱えている債務を把握するための調査や介入を妨げている」と伝えた。また、ツイッターを通じて「われわれの目的はビセンティンの機能と資産、雇用を維持し、常に会社を救うことにあった」とし、「このような状況で、会社役員の変更もできない中では公共資産を活用するわけにはいかない」と付け加えた。

画像 必要緊急大統領令の廃止を伝える大統領(フェルナンデス大統領公式ツイッターから引用)

必要緊急大統領令の廃止を伝える大統領(フェルナンデス大統領公式ツイッターから引用)

政府が民間企業を接収する決定を伝えた際には、野党だけでなく、農業分野の関係者やアルゼンチン経営者協会(AEA)メンバーの大手企業のほか、一般市民など多方面から批判の声が上がった。また「(接収の)政府決定は法的に問題がある」との指摘も高まり続けていた。7月13日のラジオ番組のインタビューに応じた大統領は「国民が喜ぶ決定だと考えていた。判断を誤った」と認め、「私有権を尊重する。手当たり次第に民間企業を接収することは考えていない」とも強調した。

現政権関係者と農家・農業団体間の関係は、2008年に政府が穀物の輸出税率の上限を引き上げる措置を導入したことで亀裂が入り、今もなお関係は改善されていない。2019年12月にフェルナンデス政権が発足して以降、政府による農産品の輸出税の再引き上げやビセンティン接収騒動が起き、国内では穀物を保管する袋サイロ(簡易型サイロ)を破損するといった事件が相次いだ。これに対し、真相を突き止めようとする姿勢を見せない政府に対する批判が強まった。

そうした中、8月2日付の現地紙「インフォバエ」によると、フェルナンデス大統領は「ポスト・コロナでアルゼンチン経済を回復に導くのは農業だ」と主張している。また同紙は、このために政府は各種の減税、労働者の社会保障や生産コストの引き下げ、国外からの投資を誘致するための奨励制度など、農業団体側と既に協議を進めていると伝えている。

(山木シルビア)

(アルゼンチン)

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