政府、債務返済交渉で債権者と合意

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2020年08月06日

アルゼンチン政府は8月4日、650億ドルの債務再編交渉で主要債権者3団体との合意に至ったと発表した。政府と債権者団体は、8月4日だった交渉期限を過ぎても交渉を続け(2020年7月28日記事参照)、4カ月以上の厳しい交渉の末合意に至った。アルゼンチンにとって歴史上9度目のデフォルト(債務不履行)を回避する道筋が開けた。

4日付の経済省発表によれば、合意を確定するための受諾回答期限を8月24日まで延長し、最終結果は8月28日に公表される予定だ。政府が今回提案した条件には、再編のために新たに発行する債券の返済日を前倒しすることが含まれる。また、元本および利息の支払額は大きく改善されないが、債権者側が有利と受け取れるかたちとした。なお、交渉の争点となっていた集団行動条項(CAC)については、詳細は明らかにされていないが、見直す方向だと伝えられている。また、政府は債券の正味現在価値(NPV、注)について、100ドル当たり平均52.5ドルで交渉していたが、今回債権者側が求めていた54.9ドルに近づくかたちとなり、平均54.8ドルで譲歩したとされる。

今回の合意は、政府関係者および野党など多方面から歓迎された。また、主要債権者団体である「アドホック・アルゼンチン・ボンドホルダーグループ」や「エクスチェンジ・ボンドホルダー・グループ」「アルゼンチン・クレディター・コミッティー」は、今回の合意は「良い結果」だとし、小口債権者の参加も呼び掛ける声明を公表した。

アルゼンチンの産業界関係者は今回の合意に対し、為替を安定させ、経済見通しの改善に向かうためには必要だったが、短期的にはマクロ経済面での課題に対する根本的な解決にはつながらないとの見方だ。8月3日付現地「エル・クロニスタ」紙のインタビューに応じた民間調査会社フィエルのエコノミスト・ダニエル・アルタナ氏によれば、アルゼンチンは多くの課題を抱えており、「合意に喜んでいられるのは束の間」と主張する。同氏は、次のステップとして、2022年および2023年に期限を迎えるIMFへの返済のため再編交渉が開始するとし、これら交渉では、構造改革が不可欠となり、財政赤字の改善および外貨準備高の拡大は必須条件だという。また、これらの改善を導くには、政府は各種規制を撤廃し、突然のルール変更を行わないなど、民間投資誘致のための安定的な経済政策を打ち出す必要があると説明した。突然のルール変更について、アルベルト・フェルナンデス政権はこれまで、民間企業の接収計画、富裕層への増税計画、公共料金の凍結、労働者の解雇を禁止する措置、テレワーク法の制定など、経済の活性化や雇用創出に繋がりにくい政策を打ち出しているとも同氏は指摘している。

(注)投資によってどれだけの利益が得られるのかを示す指標で、差額がプラスで値が大きいほど投資や事業の経済的価値が高いとされる。

(山木シルビア)

(アルゼンチン)

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