駆け引き続く債務再編交渉

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2020年07月28日

アルゼンチンにおける債務再編交渉をめぐり、3つの主要債権者団体は7月20日、共同声明を発表した。共同声明では、政府が先般発表していた提案には応じないことを債権者団同士で確認するとともに、共同で対案を政府に示したと表明した。一方、アルベルト・フェルナンデス大統領は同日、債権者団体の申し出に対して「譲歩の余地はない」と発言。8月4日の交渉期限に向けて妥結点を模索する両者の動きが続いている。

3つの主要債権者団体は「アドホック・アルゼンチン・ボンドホルダーグループ」「アルゼンチン・クレディター・コミッティー」「エクスチェンジ・ボンドホルダー・グループ」。4月から、各債権者はそれぞれ個別に政府と交渉してきたが、今回共同で声明を発表した。共同声明に具体的な提案は明記されていないため詳細は不明だが、債務再編の対象となる債権の3分の1以上を有している勢力が政府案を拒否したことは市場関係者にもインパクトを与えた。

政府は7月6日、政令582/2020号において、債務再編に向けた政府の修正案を公布した。それまで政府は債券の正味現在価値(NPV、注)について、100ドル当たり50ドル(50%)を譲らないとしてきたが、新たな政府案では平均して53.5ドルまで譲歩したとされている。

政府と債権者との間での債務交渉は、政府は3月末までに妥結を目指していたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響などにより、日程が後ろ倒しされていた。政府からの最初の提案は4月に発表され、両者の駆け引きは本格化したが、交渉期限の延長は現在までに既に6回に及んでいる。7月21日付現地「インフォバエ」紙によると、交渉の行方は必ずしも経済的側面だけではなく、米国の中南米政策なども影響を与えるとみられており、8月には政治的な決着が図られる可能性もあると指摘している。

(注)投資によってどれだけの利益が得られるのかを示す指標で、差額がプラスで値が大きいほど投資や事業の経済的価値が高いとされる。

(紀井寿雄)

(アルゼンチン)

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