第1四半期のGDP成長率はマイナス1.6%、過去10年で最低
(スリランカ)
アジア大洋州課
2020年08月11日
スリランカ統計局は8月4日、スリランカの2020年第1四半期(1~3月)の実質GDP成長率が前年同期比マイナス1.6%と発表した(添付資料表参照)。前年同期の3.7%から5.3ポイント減となり、過去10年で最低の成長率となった。
GD成長率を産業別にみると、構成比7.3%を占める農業が前年同期比10.6ポイント減のマイナス5.6%、構成比28.4%を占める製造業が11.7ポイント減のマイナス7.8%とマイナス成長を記録。一方、GDP構成比約58.3%を占めるサービス産業は0.6ポイント減の3.1%と、プラス成長を維持した(注1)。
農業分野の中では、茶がマイナス27.5%、漁業がマイナス14.4%、製造業の中では、コークスおよび石油精製品の製造がマイナス19.2%、鉱業がマイナス18.3%、建設がマイナス16.0%、テキスタイル・アパレルの製造がマイナス13.6%となった。また、プラス成長となったサービス産業の中では、宿泊、飲食サービスがマイナス6.2%と大きな影響を受けた。
統計局は、第1四半期が過去10年で最低の成長率となった要因について、新型コロナウイルスの感染拡大による世界経済の景気後退や、国内での感染拡大とそれに伴うロックダウンを挙げた(注2)。なお、統計局は、スリランカでは、1~2月は新型コロナウイルスの感染拡大はみられなかったにもかかわらず、国内経済が影響を受けた理由について、スリランカの経済は観光業や輸出産業に依存しているが、1月からの世界での新型コロナウイルスの感染拡大により、欧州市場からの輸出受注の減少、観光産業への打撃、原材料の輸入停止による製造業の生産中断などが経済にダメージを与えたためとした。
2020年の経済成長率について、中央銀行は4月23日発表のアニュアルレポートで1.5%と発表している。一方、世界銀行(6月30日)はマイナス3.2%、アジア開発銀行(ADB、6月18日)はマイナス6.1%、IMF(4月6日)はマイナス0.5%、と発表し、国際機関は程度の差はあるものの、マイナス成長を予測している。
(注1)産業別のGDP構成比は、農業、製造業、サービス業のほか、補助金を除いた税金が全体の6.0%を占める。
(注2)スリランカでは、1月に中国湖北省からの中国人観光客(帰国済み)の新型コロナウイルスの感染が国内で初めて確認されて以降、3月上旬まで感染例は報告されていなかったが、3月11日に国内で初めてスリランカ人の感染が確認されて以降、感染が拡大。3月18日に国内一部地区に外出禁止令が発令されたのを皮切りに、3月20日からスリランカ全域において、外出禁止令が発令されていた(一部解除期間を含む)(2020年3月27日記事参照)。なお、外出禁止令は6月28日に解除となった(2020年6月30日記事参照)。
(三木貴博)
(スリランカ)
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