トランプ米大統領、公共事業での外国人労働者との契約に対する是正策を検討

(米国)

ニューヨーク発

2020年08月04日

トランプ米国大統領は8月3日、公共事業における外国人労働者との契約や事業の海外委託に関わる実態調査を各省庁に指示する大統領令外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに署名した。特にH-1B(特殊技能職)ビザへの懸念を示し、最短で9月にも是正措置を実施する可能性がある。トランプ大統領は、事業を海外に委託した経済開発公社を攻撃するなどの動きをみせている。

大統領令によると、各省庁は今後、2018~2019会計年度(2017年10月~2019年9月)の委託契約(下請けを含む)について、外国人労働者との契約の有無や、契約があった場合にその業務内容、米労働者の就労機会や安全保障に対する影響を調査する。外国企業に委託された事業についても、そうした委託の米労働者への影響や、影響を受ける米労働者が貿易調整支援(TAA)プログラム(注)の対象か否かを調査するよう指示が出ている。

トランプ政権は、大統領令と同時に発表したファクトシート外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、テネシー州はじめ南東部7州で電力供給や経済開発を担うテネシー川流域開発公社(TVA)を名指しした。連邦政府所有のTVAは技術職200人超に相当する業務を外国企業に委託し、今後5年間で現地経済に推定数千万ドルの損失をもたらすと指摘している。トランプ大統領はTVAの理事2人の解任を発表するとともに、同団体のCEOを解任するよう圧力を掛けている(「ウォールストリート・ジャーナル」紙電子版8月3日)。その後、TVAは大統領令を支持する声明を出し、政権側もTVAは高度技術職の外国企業への委託の方針を転換する意向であるとのコメントを出している。

今回の大統領令を受け、各省庁の長は120日以内に、公共事業における海外依存がもたらす負の影響について行政管理予算局(OMB)局長に報告し、OMB局長は各報告を集約した上で大統領に是正措置を提言する。さらに、労働省と国土安全保障省の長官は45日以内に、H-1Bビザ保有者を雇用することによる賃金や労働条件への悪影響に対する是正策を講じるよう指示を受けている。知財窃盗がまん延する中、トランプ政権は機微な情報を扱うIT業務の海外委託が安全保障上のリスクになると指摘し、複数の非移民ビザ手続きの停止措置の施策(2020年6月23日記事参照)などを引き合いに、H-1Bビザの誤った運用に対抗すると表明している。

(注)自由貿易協定(FTA)などによる輸入増の影響で失職または労働条件が悪化した労働者のための、転職に向けた技術訓練などの機会を提供する政府による支援策。

(藪恭兵)

(米国)

ビジネス短信 916bc2a48555165a