米メディア各社、業績悪化の中でも好調なオンライン事業
(米国)
ロサンゼルス発
2020年08月17日
米国の大手映画スタジオを傘下とする各メディア企業(注1)の四半期決算が発表された。各社とも新型コロナウイルス感染拡大の影響による業績悪化を発表するとともに、好調なオンライン・ストリーミング事業の成果を強調する動きがみられた。
ウォルト・ディズニー・カンパニーは、8月4日に4~6月期決算を発表し、新型コロナによるテーマパーク事業の落ち込みが影響し、収益(注2)は前年同期比42%減の117.79億ドルとなった。しかし、米国で2019年11月にサービスを開始したストリーミングサービス、「ディズニー+(ディズニープラス)」が好調で、8月3日時点で世界で会員数6,050万人を記録、また劇場公開予定だった実写版「ムーラン」の「ディズニー+」同時配信が決定されたことなどから、同日の株価終値は約1%上昇となった。
AT&Tは、7月23日に4~6月期決算を発表し、調整後EBITDA(注3)は今期8.3億ドル減となった。これは、新型コロナ関連のコンテンツおよび広告収入の落ち込みによる22.9%の収益減、5月に米国でサービスを開始したストリーミングサービス「HBO Max」への投資による4億ドルのEBITDA減が影響したもの。
コムキャストは、7月30日に4~6月期決算を発表し、テレビ広告収入やテーマパーク部門の損失により、収益が237億ドル(前年同期比11%減)となった。映画部門の収益は、新型コロナによる映画館閉鎖に伴い劇場の興行収入が前年同期比97%減となったものの、PVOD配信など(2020年8月4日記事参照)によるライセンス収入(19.5%増)が一部相殺し、18.1%減の12億ドルとなった。
ソニーは8月4日に4~6月期決算を発表し、営業利益は前年同期比1%減に留まる2,284億円となった。これは自宅待機によるゲームのダウンロード増などが牽引したもの。また、ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメントの同期売上高は、新型コロナによる興行や広告収入減と共に、動画配信事業者からの需要増によるライセンス収入が増加したことで6%減にとどまった。
ViacomCBSは、8月6日に4~6月期決算を発表し、新型コロナによる広告収入減が影響し、連結収益は前年同期比12%減の62億7,500万ドルとなった。しかし、日本発ゲームを原作とした実写映画「ソニック・ザ・ムービー」の早期デジタル配信開始による好調な売り上げや、2019年に買収したストリーミングサービス「Pluto TV」の堅固な広告収入により、国内デジタルセールスは前年同期比25%増を記録した。
(注1)各メディア企業傘下の米国映画スタジオは下記のとおり。
- ウォルト・ディズニー・スタジオ(ウォルト・ディズニー・カンパニー)
- ワーナー・ブラザース・エンターテイメント(AT&T)
- ユニバーサル・ピクチャーズ(コムキャスト)
- ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント(ソニー)
- パラマウント・ピクチャーズ・コーポレーション(ViacomCBS)
(注2)文中の「収益」は「Revenue」を示す。
(注3)税引前利益に支払利息、減価償却費を加えて算出される利益。
(トーレス久美子)
(米国)
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