欧州委員長、復興パッケージの合意に自信を示す

(EU)

ブリュッセル発

2020年07月06日

欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は7月2日、1日にEU議長国に就任したドイツのアンゲラ・メルケル首相とともにテレビ会議形式の共同記者会見に臨んだ。当面の争点となっている復興基金「次世代のEU」および増強された2021~2027年の次期中期予算計画(多年度財政枠組み:MFF)からなるパッケージ(2020年5月28日記事参照)の合意について「最終的な達成にポジティブである」と、一定の自信を示した。

「次世代のEU」のアプローチには全加盟国が一致

同委員長は会見の冒頭、「次の6カ月はEUの将来を大きく左右することになる」と述べ、「この決定的な局面で、経験豊富なドイツが議長国の座にあることはEUにとって幸運と言える」と、自身の出身国への厚い信頼を表明した。

復興基金を含む予算パッケージに関しては、欧州理事会(EU首脳会議)での合意だけでなく欧州議会の承認、さらに「次世代のEU」の主要な部分は加盟国議会の批准も必要となる。合意の遅れは雇用と経済の損失につながるとし、この6カ月は「時間との闘いとなる」として、早期合意の必要性を訴えた。他方、「この前例のない危機に対し、前例のない対策が必要であること」、また必要な資金を金融市場から調達し、EUレベルでのさまざまなプログラムを介して加盟国に提供するという「次世代のEU」のアプローチ自体には全加盟国の一致が見られると指摘。復興基金の規模や補助金と融資のバランスは今後の交渉次第で修正されうるが、全体の設計に異論は示されていない点は「非常に良い兆候だ」と前向きな見方を示した。

また、「新型コロナウイルス危機」以前からの課題は不変であるとし、気候変動、デジタル化、欧州の世界における地位の3点を重要テーマに掲げた。気候変動に関しては、2030年に向けた脱炭素化目標を含む「欧州気候法」(2020年3月6日記事参照)をドイツ議長国期間中に提案する点を強調した。

メルケル首相も「新型コロナウイルス感染拡大を克服するために、7月17、18日の(特別)欧州理事会では、この前例のない復興計画はもちろんのこと、同時に、将来に向けた諸課題も決定的に重要」と同意し、フォン・デア・ライエン委員長が指摘した3つの重要テーマに議長国として取り組む意気込みを表した。

(安田啓)

(EU)

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