欧州委、気候中立を盛り込んだ気候法案発表

(EU)

ブリュッセル発

2020年03月06日

欧州委員会は3月4日、「気候法(Climate Law)」案PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表した。2050年までの気候中立〔二酸化炭素(CO2)排出実質ゼロ〕の法的拘束力のある目標を盛り込んだ「欧州グリーン・ディール(2019年12月12日記事参照)の核」(ウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員長)となる政策だ。気候法案には、各加盟国の「〔省エネや温室効果ガス(GHG)排出削減、再生可能エネルギー導入などの目標・政策を定める〕国家エネルギー・気候計画」のガバナンス手続きや欧州環境庁の定期報告などに基づき、目標達成に向けた進捗を管理し、施策を調整するために次の措置が盛り込まれた。

  1. 包括的な影響評価に基づき、欧州委は新たな2030年のGHG排出削減目標を提案し、気候法を改正する。
  2. 欧州委は2021年6月までに、2030年のさらなるGHG排出削減を実現するために全ての関連施策の見直しと、必要に応じて改正の提案を行う。
  3. 欧州委は進捗を評価し、政府機関や企業、市民に予見可能性を保証するため、2030~2050年のEU全体のGHG排出削減の軌道(trajectory)の策定を提案する。
  4. 欧州委は2023年9月まで、さらにその後は5年ごとにEUおよび加盟国の施策と、気候中立目標および2030~2050年のGHG排出削減の軌跡との整合性を評価する。
  5. 気候中立目標と施策が整合していない加盟国に対して勧告を出す権限を欧州委に付与し、加盟国は勧告に妥当な考慮を払うか、それができない理由を説明しなければならない。欧州委はGHG排出削減の軌跡とEU全体の施策の妥当性を見直すことができる。
  6. 加盟国は気候変動の影響に対するレジリエンス(回復力・復元力)の改善に向けた順応戦略を策定・実施し、脆弱(ぜいじゃく)性を改善することが要求される。

欧州委は前述の2.の見直し対象となる施策の候補として、次を挙げた。

  • 欧州排出権取引制度(EU-ETS)に関する指令
  • 加盟国の排出削減の分担に関する規則
  • 土地利用・土地利用変化および森林(LULUCF)に関する規則
  • エネルギー効率化指令
  • 再生可能エネルギー指令
  • 乗用車および小型商用車(バン)のCO2排出標準

将来の欧州気候協約に対する意見公募も開始

また、欧州委は同日、将来の気候行動の設計や情報共有、課題解決策のモデルなどについて、市民と利害関係者の声を集約する目的で、将来的に策定するイニシアチブ「欧州気候協約(European Climate Pact)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」に対する意見公募も開始した(公募期限:5月27日)。加えて、カーボンリーケージ(排出制限が緩やかな国への産業の流出)防止のための炭素国境調整メカニズムとエネルギー課税指令の初期影響評価(inception impact assessment)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを公開し、こちらも新たなメカニズムの策定時に一般市民の意見を反映するための意見募集(フィードバック)を開始した(募集期限:4月1日)。

(村岡有)

(EU)

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