経済安定化基金の枠組みが欧州委員会で承認、迅速な企業救済が可能に

(ドイツ)

ベルリン発

2020年07月15日

経済・エネルギー省と財務省は7月8日、ドイツの経済安定化基金(WSF)を通じた企業安定化措置の付与と実施に関する枠組みが欧州委員会により承認されたと発表した。WSFは、緊急対策パッケージに追加された6,000億ユーロ規模の企業救済ファンドで、「新型コロナ危機」により損なわれた企業の流動性確保や資本増強による安定化を図るものだ(2020年3月26日記事参照)。今後、2億5,000万ユーロまでの資本増強措置およびWSFによる融資保証については欧州委員会への案件ごとの個別通知が不要となるため、経営危機に陥った企業の迅速な救済が可能となる。

融資保証と資本増強の対象は2019年12月31日までは経営状態が健全だった企業であり、調達した資金は投資や運転資金として利用できる。申請先は連邦経済・エネルギー省となり、今後、EUの承認内容を踏まえた規則が公開される。

融資の保証期間は最長5年。期間内に完済が見込まれる、あるいはつなぎ融資が奏功する可能性が十分にあると認められることを条件とする。

連邦政府による資本増強は、議決権を伴わない増資となる。自己資金調達力の回復見込みがあることを条件とし、「新型コロナ危機」による資本の喪失を補填(ほてん)し2019年12月31日現在の水準にまで資本を回復させるために必要な金額を上限とする。返済期限は通常7年(上場企業は6年)、最長で10年。増資分の返済に際し、返済額に対し、1年目4.0%、2~3年目4.5%、4~5年目5.0%、6~7年目7%、8年目以降9.5%を連邦政府に支払う。

保証および増資の審査は金額に応じて以下の機関が行う。

  • ドイツ復興金庫(KfW):1億ユーロまでの保証
  • 経済・エネルギー省と財務省:1億~5億ユーロまでの保証または2億ユーロまでの資本増強
  • WSF委員会:5億ユーロ以上の保証または2億ユーロ以上の資本増強

今回の欧州委員会承認以前には、フライト数の激減により資金繰りが悪化しているルフトハンザ航空に対するWSFからの90億ユーロ規模の出資と融資を含む救済措置について、6月25日に欧州委員会の承認を経て、同社の株主総会で決定されている。

(中村容子)

(ドイツ)

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