新型コロナウイルスや南シナ海問題についてASEAN首脳が議論

(ASEAN)

ジャカルタ発

2020年07月03日

第36回ASEAN首脳会議が6月26日、オンライン形式で開催された。今後の新型コロナウイルス対策を含むASEAN共同体の在り方やパートナー国との協力促進などについて議論が交わされ、ASEAN首脳議長声明PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表された。同議長声明の中で、今回の首脳会議の成果文書として「団結と即応力のあるASEANに関するASEAN首脳ビジョンステートメント外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」が採択されている。

新型コロナウイルス対策関連では、ASEANの各種会合(ASEAN保健相会合など)や、「ASEAN新型コロナウイルス対策基金」(2020年4月14日記事参照)設立をはじめとするパートナー国との連携した取り組みに関して、各国閣僚やパートナー国への謝意が示された。また、次回の首脳会議に向けて、ASEAN調整委員会(注1)が「ASEAN包括的リカバリープラン」の作成を取りまとめることが決定した。

域内および国際情勢に関しては、ASEANと中国の南シナ海での領有権争いを念頭に(2020年6月23日記事参照)、各国が南シナ海における平和と安全保障、航行の自由などの維持することの重要性で一致した。また、2002年にASEAN・中国間で締結された「南シナ海における関係国の行動宣言(DOC)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」(注2)の完全で効果的な実施の重要性を指摘しつつ、より実効性のある「行動規範(COC)」の早期妥結に向けた実質的な交渉の進展を評価する旨が表明された。なお、COC締結に向けた交渉は現在、新型コロナウイルスの影響で止まっている状況だ。

東アジア地域包括的経済連携(RCEP)については、声明文とビジョンステートメントの中に、2020年中の署名への期待が盛り込まれた。ベトナムのフック首相は首脳会議のオープニングセレモニーにおいて、地域経済の自由化と統合のため、早期締結に強くコミットする決意を表明し、新型コロナウイルスにより影響を受けた経済を好転させるために重要との認識を示した。

また、インドネシアのジョコ・ウィドド大統領は、さらなる経済活性化のため、協定を結んだ各国間を隔離期間なしで移動できるようにする「トラベル・バブル」構想を提案したとされる(CNNインドネシア6月26日)。

(注1)ASEAN調整委員会(ACC)は、ASEAN経済共同体(AEC)、ASEAN社会文化共同体(ASCC)、ASEAN政治安全保障共同体(APSC)でそれぞれ進められている統合措置を、横断的に調整する役割を果たすASEAN地域機構。

(注2)南シナ海での領有権をめぐる、ASEAN諸国と中国の紛争の平和的解決を目指し、敵対的行動を自制することなどを約束したもの。

(上野渉)

(ASEAN)

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