欧州委、戦略投資基金の目標投資額の呼び込みを達成

(EU)

ブリュッセル発

2020年07月06日

欧州委員会は7月2日、欧州戦略投資基金(EFSI)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますの2020年末の終了期限を前に、目標としていた5,000億ユーロを上回る5,140億ユーロのEU域内での追加投資の呼び込みを達成したと発表した。

EFSIとは、欧州委がEU予算に基づく保証を行うことで、革新的であるが信用履歴のないEU域内の中小企業など、通常よりリスクの高い事業への欧州投資銀行(EIB)グループによる融資を可能にし、民間投資の促進を目指す基金だ(注)。欧州委がEIBグループともに、2007~2008年の金融経済危機を受け落ち込んだ投資に対する復興策として2014年に欧州投資計画を立ち上げ、EFSIを同計画の金融政策の柱とした。同計画の当初の予定(2015年1月21日記事参照)では、目標投資額を2018年までに3,150億ユーロとしていたが、当該目標額の期限内での達成見込みを受け、2017年に同基金の2020年末までの延長と、目標投資額の拡大が決定された。

欧州戦略投資基金の成功と次期投資戦略への発展を強調

EIBの2019年12月時点での試算によると、EFSIの事業は2022年までに180万人の雇用を支え、EUのGDPを1.9%押し上げるとしている。また、関連プロジェクトにおいて調達された資金の60%は民間部門からで、民間投資を呼び込むとするEFSIの目標も達成されたとした。

さらに欧州委は、「新型コロナウイルス危機」を受け5月に改訂した2021~27年の次期中期予算計画(多年度財政枠組み:MFF)の新提案(2020年5月28日記事参照)の中で、中期投資戦略「インベストEU」プログラム(2018年6月14日記事参照)の強化を目指す。同プログラムは、欧州委が成功事例とするEU予算に基づく保証など、EFSIを含む欧州投資計画を発展させるものだ。欧州委は、2021年から2027年までに少なくとも6,500億ユーロの追加投資を呼び込み、欧州における投資、技術革新および雇用創出につなげたい考えだ。支援の重点分野として、欧州委は持続可能なインフラ、研究開発、技術革新・デジタル化、中小企業および社会的投資などを挙げる。

(注)欧州戦略投資基金(EFSI)の詳細については、ジェトロ調査レポート「『欧州戦略投資基金(EFSI)』の概要」(2016年2月)を参照のこと。EIBグループは、EIBと、中小企業の金融面での支援を目的に1994年に創設された傘下の欧州投資基金(EIF)で構成される。

(吉沼啓介)

(EU)

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