外出禁止継続への不満が高まる中、政府は経済支援策の継続を発表

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2020年07月03日

アルゼンチンのアルベルト・フェルナンデス大統領は6月26日、ブエノスアイレス市およびブエノスアイレス州周辺40都市から構成されるブエノスアイレス首都圏(AMBA)における経済支援を継続する方針を明らかにした。AMBAでは、再び新型コロナウイルス感染症が拡大しているため、7月1日から17日までの間、強制的隔離措置を再び厳格化する方針が発表されている(2020年6月29日記事参照)。

具体的な経済支援は、「雇用および生産のための緊急援助プログラム(ATP)」と「緊急家庭収入(IFE)」で、これらが継続される。

「雇用および生産のための緊急援助プログラム(ATP)」は、新型コロナウイルス感染拡大により影響を受けた民間企業を支援するもので、社会保障費の雇用主負担分の支払い延期、国による補填(ほてん)的給与の給付支援が含まれる(2020年5月18日記事参照)。

6月27日付公共歳入連邦管理庁(AFIP)決議4746/2020号外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、主な支援策は以下のとおり。アルゼンチン連邦歳入庁(AFIP)のウェブサイトから、7月3日まで申請が可能。

  1. 6月分の社会保障の雇用主負担分の支払いを延期、または負担分を最大95%まで削減。
  2. 国による補填的給与の給付支援。給付額は、感染拡大が続くAMBAおよびチャコ州のレシステンシア市に限り、従業員の6月分給与の50%相当。最低賃金額の2倍(3万3,750ペソ)を上回ってはならい。そのほか、ソーシャルディスタンス(社会的距離)を保ち活動が再開できている地域では、最大給付額は、最低賃金額(1万6,875ペソ)まで。
  3. 支援対象の条件はこれまで同様。ただ、今回から、給与が12万ペソを超える従業員は支援の対象外。さらに、ATP支援を受けた雇用主は、今後12カ月間にわたって、管理職の給与を上げてはならない。支援を受けた企業に対し、従業員数が800人以上の場合、2年間にわたって配当送金や外貨取得取引を制限する条件も継続する。従業員数が800人以下の場合は、同条件は1年間有効。

なお、政府発表により、7月分給与への給付についても支援が継続されることが明らかになっている。

「緊急家庭収入(IFE)」は、支援を必要とする個人事業主やインフォーマルセクターの労働者に対し、1万ペソの給付などを行うもの。支援対象は、AMBAに加えて、北部チャコ州、南部リオネグロ州など。自営業者に対しては、無利子融資制度が設けられる。

AMBAでは、6月27日で外出禁止令の発令から100日が経過し、長引く政府の措置に対するAMBA地域の市民の不満の声が高まり、デモ行進や鍋たたき抗議も多発している。6月27日付現地紙「ラナシオン」は、アルゼンチン商工会議所による見通しとして、「今後数カ月で全国の約10万の商業店舗が閉鎖する」と伝え、さらに、ブエノスアイレス市商工連盟のデータとして「市内では約2万4,000店舗が既に閉鎖した」と伝えた。

フェルナンデス大統領は、多方面から厳格な外出禁止令の継続に対する批判を受けていることに対し、「強制隔離は、(新型コロナ感染拡大に対する)唯一の特効薬」だとし、隣国の感染者数および死亡者数と比較しながら、「隔離措置を実施していなければ、今頃、死亡者数は1万人となっていただろう」と説明した。また、「IFEの支援によって、約250万人から450万人が貧困に陥ることを防げた」とし、「これまでの辛い努力は成果につながっている」と述べて、市民に対して、措置継続への理解を呼び掛けた。

(山木シルビア)

(アルゼンチン)

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