日系企業向け「営業秘密漏えい対策ウェビナー」を開催

(中国)

上海発

2020年07月07日

ジェトロは上海で7月2日、日系企業向けの「営業秘密漏えい対策ウェビナー」(以下、ウェビナー)を開催した。今回のウェビナーは、ジェトロ上海事務所の知的財産・イノベーション部が初めて主催したオンラインセミナーで、日本からも含め、参加者は計150人に上った。

ウェビナーは、西村あさひ法律事務所上海事務所の野村高志弁護士が「在中国日系企業における営業秘密漏えい対策」をテーマに、中国における営業秘密侵害の現状、営業秘密保護の社内調査、社内の営業秘密保護対策、他社による営業秘密侵害の対策などについて講演した。

野村弁護士は、従業員が退職、転職、独立する際に、企業の営業秘密を競合他社に漏えいするケースが多く、このような場合には、民事訴訟による解決が多い、と説明した。また、あるデータによると、営業秘密侵害に関する民事訴訟案件のうち、従業員(元従業員を含む)による侵害案件は約7割を占めていた。民事訴訟は、一般的に処罰が比較的軽い刑事処罰や、行政機関に判断が委ねられる行政処罰に比べて実効性があるが、権利者の負担が大きい割に損害賠償の判決額が低い傾向にあるため、営業秘密を漏えいさせないためのルール整備が重要だ、と強調した。

続いて、ジェトロの営業秘密漏えい対策支援事業を利用した、伊藤未来能源(上海)の薮上一生製造部長が「営業秘密漏えい防止対策活動」と題して講演を行った。ジェトロが派遣した専門家から受けた指摘事項として、(1)従業員との秘密保持契約を締結していないこと、(2)社内でフリーメールアドレスを使用していたことを紹介した。こうした指摘事項に対し、同社は営業秘密保持契約書の締結や、社内でのサーバー管理ができるよう専用のメールアドレスを設置するなどの対策を解説した。

参加者からは「営業秘密漏えい対策の実現に当たって、考慮すべき事項を理解することができた」「野村先生の講演内容が非常に分かりやすかった」「伊藤未来能源の講演はジェトロ支援事業を活用した取り組みが具体的で、大変有用と感じた」などのコメントがあった。

なお、ジェトロでは、6月10日から営業秘密漏えい対策支援事業の募集を開始している。中国については、上限(25社程度)に達し次第、終了する予定。

写真 ウェビナーの様子(ジェトロ撮影)

ウェビナーの様子(ジェトロ撮影)

(天野沙羅、王志燕)

(中国)

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