商工省、EVFTAを利用したEUとの貿易拡大に備え貿易救済措置への対策を強化

(ベトナム)

ホーチミン発

2020年06月09日

ベトナム商工省は、EUベトナム自由貿易協定(EVFTA)の発効(注)に備えて、貿易救済措置(アンチダンピング、補助金相殺関税、セーフガード)への対策を強化する。ベトナムでは、「新型コロナウイルス後」の経済回復を目指す中、米国に次ぐ輸出先であるEUとのFTAに期待が集まっているが、商工省は輸出拡大に伴うEU側の貿易救済措置の発動や輸入品の増加による国内産業への影響に警戒を強めている。

ベトナム商工省・貿易救済局長のレ・チュウ・ズン氏は、「EVFTAなど関税引き下げレベルが非常に高いFTAでは、ベトナム企業には輸入品との強い競争が生じる。一方、農産物、水産物、繊維製品、履物、鉄鋼など輸出量が多い産業分野は、EU側の貿易救済措置に直面するリスクがより高まる可能性がある」(ベトナムニュース5月25日)と指摘する。

こうした中、商工省は5月19日、ベトナムの新世代自由貿易協定加盟の状況下の国内企業の貿易救済措置への対応能力の強化に向けた商工省の活動を定めた商工省決定1347/QD-BCTを発出した。ベトナムへの安価な輸入品流入からの国内産業保護と輸出の障害への効果的対応を目的とする。同決定の付録では、以下について全24項目の実施を掲げている。

  1. 国内で生産を行う企業に対する貿易救済措置に関する研修プログラムの増設(鉄鋼、木材、水産物、化学品、繊維といった主要産業やそれらの、裾野産業などの主要産業における貿易救済措置の利用や対処に関するや対応のガイダンスを含む)
  2. 国内生産関連団体に対する貿易救済措置に関する情報提供(貿易救済の早期警告を発する電子ポータル構築を含む)
  3. 貿易防衛を効果的に行うための機関設置
  4. 貿易救済措置の執行強化

さらに、5月26日付ベトナムニュースによると、商工省輸出入局はEVFTA実施のために5つのワーキンググループを設置した。ベトナム企業がEVFTAのメリットを最大限有効活用できるよう法的枠組みの整備や調査などを行う。そのうちの1つはベトナム・EU間の輸出入を監視し、EUへの輸出に影響を与える可能性のある新たなEUの政策と管理措置情報の更新を担うとされている。

(注)EVFTAは欧州議会本会議で2月12日に承認された(2020年2月14日記事参照)後、ベトナム国会が6月8日に批准議定書を可決した。

(小林亜紀)

(ベトナム)

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