フランスがフラン圏西アフリカ諸国との通貨協定批准を閣議決定

(フランス、コートジボワール)

アビジャン発

2020年06月04日

フランス政府は5月20日の閣議で、2019年12月21日にコートジボワール・アビジャンで署名されたフランスと西アフリカ経済通貨同盟(UEMOA)加盟国による通貨協力協定(2020年1月6日記事参照)の批准法案を決定し、国民議会に提出した。今次協定は、1973年12月4日に締結された協定に替わるもので、UEMOA地域の共通通貨であるCFAフラン制度の刷新に向けて大幅な改定を見込んでいる。

改革の柱は、(1)CFAフランの廃止と新共通通貨「ECO」への移行、(2)フランス国庫への外貨準備預託制度の廃止、(3)西アフリカ諸国中央銀行(BCEAO)理事会と金融政策委員会へのフランス政府代表在籍制度の廃止。他方、フランスは引き続き、UEMOA地域共通通貨の無制限交換性とユーロ連動性を保証する。

従来のCFAフラン通貨圏は、BCEAO名義でフランス国庫に開設された操作勘定の運用によりユーロ固定相場制、無制限交換性が保証され、外貨の中央集中管理の原則のもと機能する通貨システムだった。

新たな制度では、CFAフラン通貨圏の本質的機能だった外貨準備をフランス国庫に預託する操作勘定が廃止されることから、「操作勘定取極」に替って、フランスとBCEAOは今後、運用上の技術的細目を定めた保証条項の取極を別途締結することになる。

フランス政府は、制度改定による財政への影響について、UEMOA諸国で外貨準備が不足した際に、必要資金の無制限貸越し保証の発動が見込まれるが、過去の実績からその可能性は低いとみている。UEMOAでは、2012~2019年の平均経済成長率は6%を超え、2019年末の債務残高はGDP比50%以下に抑制されるなどマクロ経済が好調に推移しており、外貨準備高も輸入の6カ月分と高い水準にあることなども理由に挙げている。1994年のCFAフラン切り下げ以降、フランス国庫による保証発動の実績は皆無としている。

独立以来続いてきたCFAフラン通貨圏体制を改革へと推し進めた背景として、現地報道ではフランスのマクロン大統領が機会あるごとに「フランサフリック(新植民地主義)」といわれる仏アフリカ関係における旧弊からの脱却の意向を示していたことを挙げており、また西アフリカのフラン圏諸国が西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)地域における通貨統合プロセスの促進に向けて、フラン圏体制の見直しを求めていたことがある。

一方、ECOWASに内包されるUEMOAは、域内の非CFAフラン圏7カ国に先駆けECOWASの共通通貨ECO導入を目指すが、地域の通貨統合プロセスを順守していないとして、主要国ナイジェリアなどがCFAフランのECO移行に反発しており、今後の動きが注視される。

(渡辺久美子)

(フランス、コートジボワール)

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