フランス政府、航空機産業に総額150億ユーロを支援

(フランス)

パリ発

2020年06月11日

ブリュノ・ルメール経済・財務相は6月9日、総額150億ユーロの航空機産業向け支援計画を発表した。企業救済・解雇回避、中小・中堅企業の近代化、脱炭素化に向けた新型航空機の開発支援の3つが柱となる。

企業救済・解雇回避に向けては、航空機の発注取り消しや延期を回避するため、公的投資銀行BPIフランスの輸出信用を利用した航空会社に対し12カ月のモラトリアム(返済猶予期間)を認める。さらに航空機の新規購入に関わる輸出信用供与について、欧州委員会に対しOECD公的輸出信用アレンジメントの一時的な緩和(返済据置期間の6カ月から18カ月への延長)を参加国で協議するよう働きかける。また、軍用機など公的部門で8億3,200万ユーロを前倒しで発注するほか、3月に導入した緊急支援措置、とりわけ政府保証融資や一時帰休制度を今後も継続して実施する(注)。

中小・中堅企業向け支援として2つの投資ファンドを設置する。国が2億ユーロ、航空機産業(エアバス、サフラン、ダッソー、タレス)が2億ユーロ、投資会社が1億ユーロを拠出し、総額5億ユーロの投資ファンドを7月に設置する。これにより、「新型コロナウイルス」の影響で弱体化した企業の資本強化を目指す。長期的には同投資ファンドの規模を10億ユーロに引き上げる。さらに国が今後3年間に3億ユーロを拠出し、中小・中堅企業のロボット化、デジタル化を支援する投資ファンドを設置するとした。

他方、航空機産業の脱炭素化を推進するため、カーボンニュートラルの次世代航空機の就航目標を従来の2050年から2035年に前倒しし、この実現に向けた研究開発に今後3年間で総額15億ユーロを投入する。ルメール経済・財務相は、2020年4月に発表したエールフランスKLM航空に対する総額70億ユーロの政府支援(直接融資30億ユーロ、融資への公的保証40億ユーロ)に触れ、同支援によりエアバス航空機の調達が維持され、産業全体の支援につながるとした。環境負荷が低い機体への移行が政府支援の条件の1つとなっていた(2020年4月28日記事参照)。

航空機産業は約30万人を雇用しており、年間売上高(2018年)は580億ユーロに達する。ルメール経済・財務相は、新型コロナ危機の影響で「公的支援がなければ今後6カ月で10万人の雇用が脅かされるだろう」と述べた。また航空便の運行が2019年12月の水準に回復するまで2~3年かかるとした。

(注)現行の一時帰休制度は7月から改正される見通し。具体的な内容について政労使で6月中旬から協議する。

(山崎あき)

(フランス)

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