ドイツ政府が国内の新型コロナワクチン開発企業に出資、技術流出や買収を警戒

(ドイツ)

ベルリン発

2020年06月17日

連邦政府は6月15日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン開発企業、キュアバックに出資すると発表した。ペーター・アルトマイヤー経済・エネルギー相と、キュアバックの主要株主である投資会社ディビニ・ホップ・バイオテック・ホールディングのディートマー・ホップ共同創立者が記者発表を行った。

キュアバック(本社:チュービンゲン)は、ドイツのバイオテクノロジー企業で、米国からの買収が取り沙汰されるなど脚光を浴びている(2020年3月25日記事参照)。

連邦政府はドイツ復興金融公庫(KfW)を通じて約23%の株式を3億ユーロで取得するが、経営には介入しない方針だ。キュアバックは増資により調達した資金を、メッセンジャーリボ核酸(mRNA)の技術開発や事業拡大に利用する。

アルトマイヤー経済・エネルギー相は、「出資の目的は、ワクチン開発を加速させ、キュアバックの技術を実用可能にすること。ドイツと欧州の産業政策にとって同社の研究成果や技術は必要不可欠である」とコメントしている。

今回の出資は、6月12日に閣議決定された景気刺激策の中の「未来パッケージ」(2020年6月10日記事参照)に盛り込まれた「新型コロナウイルスワクチン開発支援」を実装する第一歩として位置づけられている。

また、連邦政府は、新型コロナウイルス感染拡大により経済的に影響を受けている、先端技術を有する国内企業がEU域外の投資家に買収されることを警戒しており、5月には医療関連企業に対する投資・買収監督を強化している(2020年5月26日記事参照)。

(中村容子)

(ドイツ)

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