日系のAAICがヘルスケア・スタートアップに出資、「新型コロナ禍」でもICT活用ビジネスに可能性

(エジプト、日本)

カイロ発

2020年06月12日

ファンド運営・コンサルティング会社のAAICは6月、エジプトのメンタルヘルスケアのスタートアップShezlongへ出資した。Shezlongは2014年に設立され、オンライン上でメンタルヘルスの診断・相談サービスを提供しており、今回の出資を受けて機能強化やアラビア語圏への海外進出を図る。AAICの半田滋ディレクターは6月10日、ジェトロのインタビューに対し、出資の理由を「新型コロナウイルスの影響で顕著になったとおり、昨今、社会は不確実な要素が強くなり、日々のストレスや不安を抱える人が増加している。『Arab Youth Survey』によると30%もの人がメンタル面での課題を抱えるというが、プライバシーの問題で通院のハードルが高い。同社はプライバシーが守られたオンライン環境で気軽に相談できるサービスを提供しているため、成功の可能性が高いと判断した」と話す。

AAICは、ヘルスケアに特化した投資ファンドを形成しており、2019年5月にはエジプトの歯科関連商品BtoBオンラインストアのDentaCarts外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますにも出資している。半田氏は「エジプトのヘルスケア分野において、複雑な伝統的流通構造をEコマース移行により、シンプルで便利な流通構造に移行する動きがある。また、同社の注文精度、配達速度、非正規品の排除といった付加価値に注目した」と述べる。エジプトのヘルスケア分野の特色について、「1億人の人口が増加を続けており、生活習慣病なども増え、医療需要が高まっている。一方、一部の私立病院を除き、公的病院などはサービス面で課題が多いため、民間のヘルスケアビジネスのチャンスは大きいと感じている」と語る。

エジプトにおいてスマートフォンの契約は約3,000万件で、フェイスブックアカウント数は約3,600万にのぼり、モバイル決済も可能な電子決済サービスの「Fawry」が普及する中、スタートアップがICTを用いたビジネスに取り組んでいる(「エジプトにおけるスタートアップの現状」参照)。2019年のエジプトへのベンチャーキャピタル(VC)投資は、MAGNiTTによると中東・北アフリカにおいては投資金額1位、投資件数は2位であり、パーテック・パートナーズによるとアフリカでは投資金額、件数はともに3位となり(2020年2月4日記事参照)、海外からの注目が徐々に高まっている。

エジプトの民間企業は新型コロナウイルスの影響により資金繰りや営業が厳しくなる中、アクセラレーターRiseUPのアブドゥル・ハミッド・シャララ最高経営責任者(CEO)は、同社が支援するICTを活用したスタートアップでは逆に新型コロナウイルス発生後に成長している企業もあるとして、ヘルスケア、Eコマース、オンライン教育、オンラインのゲーム・エンターテインメントの分野では、40〜50%の成長が見られたと述べた(「ahram」紙4月25日)。

(井澤壌士)

(エジプト、日本)

ビジネス短信 c103528248c5c2c1