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WTOパネルが安全保障例外の適用を認める、サウジとカタールの紛争で2例目に

(世界)

国際経済課

2020年06月23日

WTO紛争処理小委員会(パネル)は6月16日、サウジアラビアの知的所有権保護に関する紛争(DS567)について、報告書を配布した。パネルは本事案の申立国であるカタールの主張を認め、サウジのWTO協定違反を認定した。他方、安全保障上の理由から違反措置は正当化される、とするサウジ側の主張も一部認めた。WTOにおいて、安全保障を理由に貿易制限的措置を正当化する判断が下されたのは、ロシアのウクライナに対する通過運送制限を容認したパネル判断(DS512、2019年4月9日記事参照)に続き、2例目となる。

本事案では、サウジ政府がカタールのスポーツ専門放送局ビーイン(beIN Media Group)の放映権を適切に保護していたか、が争われた。パネル報告書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、ビーインはサウジを含む中東地域で各種プロスポーツの放映権を有する。しかし、サウジ政府は2017年6月、カタールとの国交断絶を発表した後、ビーインが同国内でメディアコンテンツを配信するために必要な免許を有していないとする通知を出した。その後、2017年8月から、サウジの放送局ビー・アウト・キュー(beoutQ)が、サウジ国内でビーインが放映権を有するコンテンツの配信を始めた。これに対しビーインは、そのコンテンツ配信行為を違法(illegal)とし、取りやめを求めていた。

こうした中、カタールはパネル審理の中で、(1)サウジ政府が、ビーインの放映権の行使に協力しないようサウジ国内弁護士に要請し、同社の民事上の司法手続きを妨げたこと、また(2)サウジ政府がビー・アウト・キューに対し、違法配信行為に関する刑事手続きを開始しないことなどを理由に、サウジの「知的所有権の貿易関連の側面に関する(TRIPS)協定」違反を主張した。これに対しサウジは、カタールが主張するWTO協定違反の有無を問わず、サウジ政府の行為は安全保障を理由に正当化される、としていた。

パネル報告書は、上記(1)と(2)について、サウジのTRIPS協定違反(注)を認定した。他方、TRIPS協定73条(b)(安全保障のための例外)に基づき、(1)に係る措置は正当化される、という判断を下した。パネルは先述のDS512を踏襲し、安全保障を理由とする貿易制限的措置の許容は司法審査に服することをあらめて示した。その上で、サウジ政府の(1)の措置は安全保障を理由とした国交断絶を行うための措置の一部だったとし、安全保障上の利益保護と同措置との関連性を認めた。

(注)TRIPS協定42条(公正かつ公平な手続き)、同協定61条(刑事上の手続き)など。

(山田広樹)

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