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WTOパネルがロシアによる貿易制限措置を容認、「安全保障例外」条項を初めて適用

(ロシア、ウクライナ、WTO)

欧州ロシアCIS課

2019年04月09日

WTO紛争処理小委員会(パネル、注1)は4月5日、ロシアが2016年以降にウクライナ製品が自国領を通過するに当たって課しているトランジット(通過運送)制限措置に関して、GATT(注2)21条「安全保障のための例外」に照らし、制限が妥当と判断した。WTOにおいて、GATT21条が適用されたのは初めて。

本紛争は、ロシアとウクライナで争っているもの。紛争の元となった制限措置は、2016年1月1日付ロシア大統領令第1号および連邦政府決定第1号(2016年1月1日付)。本措置は、ウクライナとEUとの間の自由貿易協定(FTA)発効(2017年9月14日記事参照)への対処を目的としたもので、ウクライナからロシア領内を通過してカザフスタン、キルギスへ、自動車もしくは鉄道によるトランジット輸送を行う際、ベラルーシを経由し、かつ、グロナス(注3)技術を搭載した自動車・鉄道による封印識別した場合のみ許可されるという内容のもの。その後、モンゴル、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン向けのウクライナ製品のトランジット輸送にも、本ルールが適用されている。

本措置について、ウクライナはWTOに対し、ロシアがトランジット自由原則に違反し、かつ、WTO加盟協定書に記載されている義務も不履行で、これによってウクライナ製品の中央アジア、中東、コーカサス諸国への輸出が3分の1に減少したと訴え、2016年9月にパネル設置を要請した。これに対し、ロシアはGATT21条に該当する安全保障上の不可欠な措置だと反論していた。

WTOは2017年3月にパネルを設置し、ウクライナの主張を審議した結果、ロシアがとった措置は、緊急状況にある国際関係下における安全保障上の利益保護に不可欠で、GATT第21条(b)(iii)「戦時その他の国際関係の緊急時にとる措置」およびロシアのWTO加盟議定書に合致するとの結論を出し、主張を退けた。今後は当事者のどちらか一方が上級委員会へ控訴しない場合、WTO紛争解決機関の採択後に発効する。

ロシア経済発展省は、WTOはこれまでGATT第21条について解釈を行ってこなかったため、今回の紛争は非常に大きな意義を持つとコメント。同相のマクシム・オレシキン氏は「現在、米国政府は鉄鋼・アルミニウムに対する追加関税賦課(2018年3月27日記事参照)に関して、国家安全保障を理由とする正当な措置と説明しようとしているが、今回の採択によって、(安全保障の基準が明確化されたことで)米国との貿易紛争における、より重要な論拠となる」と語り、自国産業保護のため、国家安全保障を名目とする貿易制限を課す米国政府を牽制している。

(注1)今回のパネル参加国・地域は、オーストラリア、ボリビア、ブラジル、カナダ、カナダ、チリ、中国、EU、インド、日本、韓国、モルドバ、ノルウェー、パラグアイ、サウジアラビア、シンガポール、トルコ、米国。

(注2)関税および貿易に関する一般協定の略称。本稿で記載しているGATTは1994年の改正協定。

(注3)ロシアの人工衛星を利用した測位システム。

(齋藤寛)

(ロシア、ウクライナ、WTO)

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