4月の米国の貯蓄率は33%、過去最高を記録

(米国)

ニューヨーク発

2020年06月05日

米国商務省が5月29日に発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした2020年4月の米国の貯蓄率(注1)は33.0%で、過去最高を記録した(添付資料図参照)。可処分所得が18兆6,602億ドルと前月(16兆5,325億ドル)から増加(2兆1,277億ドル、前月比12.9%増)した一方で、貯蓄が6兆1,490億ドルとそれを上回る増加(4兆418億ドル、2.9倍)を示したことなどから、貯蓄率は前月(12.7%)より20.3ポイントの大幅上昇になった(添付資料表参照)。貯蓄率は1975年5月に記録した17.3%を上回り、統計開始(1959年)以来の最高水準となった。

政府の救済措置により移転所得が増加

可処分所得についてみると、3月に成立した「コロナウイルス支援・救済・経済安全保障(Coronavirus Aid, Relief, and Economic Security)法」に盛り込まれた救済措置(2020年3月20日記事参照)の実施が移転所得(注2)を押し上げ、2兆9,991億ドル増(前月の1.9倍)となった。移転所得の内訳をみると、政府からの現金給付を含む、「その他の社会給付」が前月から2兆5,938億ドル増(5.9倍)の3兆1,221億ドル、失業保険給付が3,605億ドル増(6.2倍)の4,301億ドルとなり、いずれも大幅に増加した。

雇用者報酬は8,785億ドル減(前月比7.7%減)となったものの、移転所得が大幅に増加したことから、可処分所得は1975年5月に記録した6.2%増を上回り、統計開始以来最大となる増加幅(12.9%増)を記録した。雇用者報酬に関しては、失業率が14.7%と戦後最高を記録し、雇用者数が前月から2,050万人減(2020年5月13日記事参照)となるなど、急激な雇用市場悪化が影響したとみられる。

貯蓄額については、可処分所得が増加したにもかかわらず、自宅待機令により外出の機会が減り個人消費支出が減少したことから、可処分所得以上の増加となり、統計開始以来最大となる増加幅(2.9倍)を記録した。多くの州で自宅待機令が発令される中で、個人消費支出は前月比13.6%減の12兆133億ドルと、大幅に減少した。前月(6.9%減)に続き、2カ月連続で、統計開始以来最大となる減少幅を記録した。

ハーバード大学ケネディスクールのシニアフェロー、メーガン・グリーン氏は「全店舗が閉店し、全員が(自宅に)閉じ込められ、買い物をする機会があまりなかったことから、一種の需要ショックのようなものだ」と指摘した。また、バンク・オブ・アメリカの最高経営責任者、ブライアン・モイニハン氏は「(政府による消費)刺激策は(家計の)財布の中にまだ残っていることを意味し、今後使用されることになる」と述べた(「CNBC」5月29日)。一方で、FHNフィナンシャルのチーフエコノミスト、クリス・ロウ氏は「仮に経済再開に時間がかかる場合、貯蓄の低下は抑制され、(個人消費支出の)急回復にはつながらないだろう」と述べた(ロイター5月30日)。

(注1)可処分所得(個人消費支出+貯蓄)に占める貯蓄の割合。

(注2)政府などから家計に支払われる社会保険や失業保険などの所得移転のことで、生産を伴わない所得。

(権田直)

(米国)

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