トランプ大統領、総額2兆2,000億ドルの救済法案に署名

(米国)

ニューヨーク発

2020年03月30日

トランプ大統領は3月27日、第3弾となる新型コロナウイルス対策の救済法案に署名した。今回の措置は2兆2,000億ドルに上る米国史上最大規模の救済措置で、各世帯への現金給付や失業保険の拡充、民間企業支援などが盛り込まれた。

今回署名された「コロナウイルス支援・救済・経済安全保障(Coronavirus Aid, Relief, and Economic Security)法」(H.R.748PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます))は、各頭文字から「CARES法」と略される。政権と議会の与野党指導部が法案に関わる協議を行い、3月25日に上院を満場一致(賛成96票、反対0票)で通過、27日に下院でも発声投票で可決された。

トランプ大統領は法案署名に際して、「米国史上最大の経済救済策に署名する」「2兆2,000億ドルの救済策となる」と述べ、支援は米国の家族、労働者、産業界に直ちに届くと伝えた。今回の救済策は、米国の名目GDP(約21兆4,277億ドル、2019年)の約1割に相当し、世界金融危機後の2009年にオバマ政権下で成立した7,870億ドルの経済救済法の規模。

個人・世帯への支援では、成人に1,200ドル、未成人(17歳以下)に500ドルが提供される。収入が一定額を超える場合は、世帯の家族構成などに応じて減額調整や権利喪失の対象となる。失業保険の拡充については、各州からの給付に追加して1週間当たり600ドルの追加給付を受けられる(7月31日まで)。米国ではホテルやレストランなどサービス業で失業者が激増しており、3月15日~21日の新規失業保険申請件数は328万3,000件に上る(2020年3月27日記事参照)。

経済面では、米国連邦準備制度理事会(FRB)を補完する形で企業や州・自治体に融資や債務保証などを行う資金源として4,540億ドルを充てる。スティーブン・ムニューシン財務長官はFRBの資金拡大により4兆ドルの流動性が供給されると見込んでおり、トランプ大統領も署名式で「(最終的に)6兆2,000億ドル(分の景気刺激)となる可能性を秘めている」と述べた。その他、旅客・貨物航空会社(290億ドル)や「国家安全保障の維持上重要な」企業(170億ドル)にも直接融資が付与される。

中小企業向けには、3,770億ドルの予算が確保され、その大半が従業員の給与支払いのための融資に用いられる。中小企業(注1)は、1,000万ドルを上限に、全従業員の平均月額給与(基本給や健康保険料、年金積立金などを含む)総額の250%まで融資を受けられる。本融資の実施期間は2月15日から6月30日までとなる。その他、中小企業庁(SBA)が提供する融資の対象拡大や既存融資の一部債務免除などが盛り込まれた。

そのほかCARES法には、医療機関や州・自治体への支援、医療資材の確保などが含まれる。米国内の感染者数は引き続き増加しており、ナンシー・ペロシ下院議長(民主党、カリフォルニア州)は医療費の無償化や傷病休暇の拡充など追加法案を検討すると表明している。

(注1)対象は(1)従業員500人以下の企業もしくは中小企業庁による小企業(small business)の定義に該当する企業、(2)個人事業主、(3)従業員500人以下の特定の非営利団体。

(注2)これまでの連邦政府の新型コロナウイルス対策法については以下を参照。

(藪恭兵)

(米国)

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