米商務省、懸念国への輸出管理規制を強化、一部パブコメも募集

(米国、中国、ロシア、ベネズエラ)

ニューヨーク発

2020年05月07日

米国商務省産業安全保障局(BIS)は4月28日、米国製品(物品・ソフトウエア・技術)の輸出管理を厳格化するルールを2件、官報で公表した。ともに中国、ロシア、ベネズエラへの輸出管理強化を目的としたもの。1つ目は3カ国への輸出に対する軍事エンドユース・エンドユーザー管理の拡大外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、2つ目は輸出規制品目が懸念国の民間エンドユーザー向けの場合の許可例外の削除外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますとなる。いずれも6月29日から施行となる。またBISは、第三国を経由して懸念国に米国製品を再輸出する際の許可例外を撤廃する案を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますし、6月29日までパブリックコメントを募集する。

中国、ロシア、ベネズエラ向けの輸出管理を拡大

一連のルール厳格化は、2018年8月に成立した輸出管理改革法(ECRA)に基づく。ECRAの目的は、技術の発展に伴い軍事用と民生用の技術の境目が曖昧になる中、重要な技術の国外流出をより厳格に管理することにある(注1)。ウィルバー・ロス商務長官は4月27日のプレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、「中国、ロシア、ベネズエラの中には、これまで米国の輸出管理を迂回して、米国の国益を損なおうとした者がいる。われわれは米国の技術が悪人に渡らないよう警戒を続ける」としている。BISの新ルールでは、これら3カ国における軍事用途、軍事最終需要者への輸出許可の手続きを厳格化する。さらに、「軍事用途」の定義を拡大し、管理対象の品目に半導体装置、センサーなどの技術も含めるとしている。

懸念国への民生用途の輸出に関する許可例外を除去

もう1つの措置は、上記の3カ国に限ったものではなく、規制品目リスト(Commerce Control List:CCL)で国家安全保障上、懸念があると指定された国(D:1国、注2)に対して、国家安全保障(NS)規制品目を輸出・再輸出・国内移転する場合、民生用途で民生需要者向けであれば事前の許可を不要としていた許可例外(Civil End-Users:CIV)を削除する。

懸念国への再輸出に関する許可例外撤廃につきパブコメ募集

最後は、再輸出に適用される許可例外(APR)の一部条項を撤廃する案となる。例えば、国家安全保障規制対象の米国製品をワッセナー・アレンジメント参加国(注3)または香港から安全保障上懸念のある第三国に再輸出する場合、一定の要件を満たせば米当局の事前許可は不要とされていた。BISは今回、その場合でも、CCLのD:1国を事前許可不要の再輸出先から除外するとしている。BISは同案に対するパブリックコメントを6月29日まで募集しており、連邦のポータルサイトwww.regulations.gov外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで受け付けている(ID番号:BIS-2020-0010)。

米半導体産業協会は4月27日、米国政府の目的に理解を示しつつも、「これらの広範なルールが不必要に半導体の輸出管理を拡大し、世界的な経済危機の中でさらなる不確実性を生み出さないか懸念している」との声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表している。

(注1)ECRAの概要については、ジェトロ調査レポート「厳格化する米国の輸出管理法令」(2019年9月)を参照。

(注2)CCLのCountry Groups外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますにおけるCountry Group Dのうち、D:1に「X」が記されている国。中国、ロシア、ベネズエラはいずれも含まれている。

(注3)CCLのCountry Groups外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますにおけるCountry Group Aのうち、A:1に「X」が記されている国。ただし、ロシア、マルタ、ウクライナは除く。ワッセナー・アレンジメント(正式名称:通常兵器及び関連汎用品・技術の輸出管理に関するワッセナー・アレンジメント)の概要については外務省解説ページ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます参照。

(磯部真一)

(米国、中国、ロシア、ベネズエラ)

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